お姉ちゃんとお兄様方の小話 その2【『ニャンという事でしょう』とそのゲーマーは言った】(ゲーマー兄様と猫兄様)
休日、僕はゲームセンターに来ていた。目的はもちろん維さんと啓悟のグッズだ。プライズ限定『プロヒーローぬいぐるみ 私服バージョン』をゲットするために来たんだけど…。
「まさかのパンチングマシーンかよ…」
そこはさ…クレーンゲームとかあったじゃん…何でよりによってパンチングマシーン?これはゲームと言えるの?てかスコア高…。誰だよこんなハイスコア出した奴。みんな更新できてないじゃん…。
「無理!!こんな高スコア更新無理!!誰だよこんな記録出した奴!!」
「あー…なんか、雄英の生徒がオールマイトのぬいぐるみ目当てで出したって店員さんが…」
「……それってさ…」
うん……緑谷君だね…ヒーロー・デク………やりすぎだよ…。…もっと早く来るべきだったかな…。
「あれ?お姉さん!こんにちは!」
「あいるちゃん?とお兄様方…こんにちは。デートですか?」
ゲ「そうそう、ゲーセンデート中。朧サンは?デート?」
「いえ僕は一人です。…このプライズが欲しくてここに」
猫「あー…プロヒのぬいぐるみ?維くんいるじゃん。あいるこれ欲しい?」
「欲しい…けど、前の人のスコア結構高いね…」
「緑谷君が出したらしいよ。そのおかげで結構高難易度になってる」
ゲ「てかスコアが低くても高くてもあいるにパンチングマシーンは無理だろww」
猫「確かに…ww」
確かに…。たとえスコアが30とかでもあいるちゃんには無理だと思う…。
「そ、そうだけど…お兄ちゃんならできるでしょ!?」
ゲ「えー…めんどい…てか爪割れるかもじゃん」
猫「同じく」
「ええ〜そんなぁ…」
…しょんぼりしてるあいるちゃんも可愛いなぁ…。………じゃなくて、
「あいるちゃん、僕取ろうか?」
「…えっ、お姉さんが?できるの?」
「多分いける。…蹴っていいならもっと楽だけど、まぁいいか」
ゲ「マジかww朧サン!やるとこ撮ってもいい?」
「いいですよ。何なら動画アップとかしてもいいですよ」
猫「いいの?身バレとか」
「ご心配いただきありがとうございます。問題ありませんので大丈夫です」
身バレしかけても公安のサーバー課が何とかしてくれるから…。すごいよなぁ…24時間監視してるんだよ、あの課。気が狂ってるよ…。
ゲーム代を払って、手にサポーターをつける。…さて、雄英生に現役公安職員が負けるわけにはいかないなぁ…。
「お姉さん頑張れー!!」
ゲ「頑張れー。めっちゃワクワクする」
猫「ファイトー」
「はーい、ありがとうございます。……すー………」
大きく息を吸って、止める。左で狙いを定め、思いっきり右手を機械のサンドバッグに叩き込んだ。ドンッ!!!!と大きな音がしてサンドバッグが揺れる。
「……ふー…………。…スコアは?」
「えっ、あっ、し、新記録達成ー!!!!…えっ、嘘でしょ」
店員さんは測定器のディスプレイを何度も見る。…テンパりすぎでしょ。
ゲ「ヤッベェwwwサンドバッグすげぇ揺れたww」
猫「ギャップやばww」
「お姉さんすごい!!」
「ありがとう。はいこれ、ぬいぐるみ」
「ありがとう!!でもいいの?お姉さんのは?」
「僕の?今から取るよ?」
「「「えっ?」」」
確認したところ、制限は無いようだ。つまり自分の記録を更新できたらプライズゲットということになる。…2回更新すればいい訳か……あ、いや、
「ちよちゃんもこのぬいぐるみ欲しいかな…となると、維さん2個、啓悟1個で計3回更新したらいいのか…」
ゲ「朧サンマジ最高www」
猫「すごい簡単そうに言うじゃんww」
「これくらい大丈夫…だといいなぁ…」
「あ、ちょっと弱気になってる…?」
流石にね…自分との戦いになるとちょっとね…。まぁ、やるけど。
「さて、と……」
「お姉さん!上着持つよ!」
「いいの?というかあいるちゃん、お兄様方とデート中じゃないの?」
ゲ「あ、大丈夫大丈夫。というかコレ見たいから気にしないで」
猫「朧サン無双、めっちゃ気になるからさ」
僕無双…とは…?……まぁ、いいか。
あいるちゃんに上着を預けて、またサンドバッグの前に立つ。……他にも取らないといけないものがあるんだから、最速で終わらせる…!
「はっ!!!!」(ドンッ!!!!)
「えええええええ嘘でしょ!?き、記録更新!!」
ゲ「やばい…朧サンがめちゃくちゃかっこよく見えてきたかもしれねぇ…」
猫「いや…あれはかっこいいだろ……」
「お姉さん頑張ってー!!」
あいるちゃんの声援が染みる…!!今なら…オールマイト相手でも勝てそう…!!
「…っらぁ!!!!」(ドンッ!!!!!!)
「記録更新…!!」
「後1回だよ!!」
ゲ「頑張れ!!」
猫「朧サンやっちまえ!!」
「……っラストォ!!」(ドゴッ!!!!!!)
「…っ記録更新!!おめでとうございます!!」
わぁ…!!と歓声が響く。あー…疲れた…………あ、
「……エンデヴァー取るの忘れてた。すいませんもう一回やります」
「「「「まだやるの!?」」」」
店員さんにもツッコまれてしまった。……まぁ確かにやり過ぎだよね…乱獲してごめんなさい…。でも維さん・啓悟、と来たら、エンデヴァーも揃えたいんだ…!わかってくれこのオタク心…!!僕は維さんも啓悟も好きだけど、エンデヴァーも好きなんだ…!!というかあの3人が何かやってるとこ見るのが好きなんだ…!!
「ひとりぼっちは…寂しいもんな……」
「お姉さん…?」
猫「まど◯ギ…?」
ゲ「杏◯かよ…www」
左手で狙いを定めて、大きく息を吸い、一度吐き出す。もう一度息を吸って…止める!
「…っPULS ULTRAァ!!プロミネンスバーン!!!!」(ドゴッ!!!!!!!!)
「き、記録…更新…!!!!」
「……ふう、これでよし」
ちよちゃんと僕の分の維さんに、啓悟に、エンデヴァー…よしこれでオッケーだ。
ゲ「俺…なんかよくわかんねぇけど、感動したわ…」
猫「ああ…感動したな…。何に感動したかわかんねぇけど」
「すごかったね…」
「お待たせしました。あいるちゃん、持っててくれてありがとう。……どうかした?」
「「「ううん、何でもない」」」
「?そうですか。……僕、他に取るものがあるからまだゲーセン回る予定だけど、みなさんは?」
ゲ「あー……朧サン、何欲しいの?」
猫「俺らで取るよ。……すげぇもの見せてくれたし」
「??何かお見せしました?」
ゲ・猫「「無自覚!?」」
……僕、そんなすごいもの見せたっけ?
その後、お兄様方が僕とあいるちゃんの欲しい景品を全部取ってくれた。ちなみに例のパンチングマシーンの動画はゲーマーのお兄様がアップしたところ、めちゃくちゃバズったらしい。
僕は、啓悟経由で動画を見たエンデヴァーから「二度と人前であの技名を叫ぶな」ってちょっと叱られた。そういえば雄英の校則、お嫌いでしたね。忘れてました。…言われなくても、叫びませんよ。恥ずかしいし。
【その医者も愉快犯につき】(医者兄様)
「さて……媚薬の感想を聞こうか」
「感想じゃねぇよヤベェもん作りやがってこのマッド」
つい敬語を外してしまった。…でもこれはしょうがないと思う。あいるちゃんのお兄様が媚薬なんて作らなかったらあんなことにはならなかったんだし。
彼の病院のラウンジで僕らはコーヒーを飲みながら軽口を叩く。あいるちゃん経由で呼び出されたと思ったら…この間の媚薬のことかよ…。思い出したくないんだけどなぁ…。
「wwwww朧サンめちゃくちゃキレてるじゃんww」
「…笑い事じゃないんですけど」
「あーwwハイハイwwwごめんごめんww」
「謝罪が軽い…」
絶対悪いとか思ってないですよね…。
「だがなぁ…俺も被害者だぞ?薬を盗まれたんだから」
「そうですけど…。……というか何であんなもの作ったんですか…」
「あいる達に使おうと思ってな。まぁ、アイツらに使う前に実験できてよかった。…で、どんな感じだった?」
……この人本当に、あいるちゃんのお兄様なのかなぁ…。実の妹とその彼氏に媚薬使おうとするとか…………いや待て。…多分僕もやるなぁ…エンデヴァーには無理かも知れないけど、啓悟にやるかも……いや、やるな。うん、絶対する。だって面白そうだし。……僕もなかなかヤベェわ…。
「どんな感じと言われても…とりあえず体が熱かったです。あとは…体全体が性感帯になったかってくらい反応しやすくなりました。希釈もできませんし…どうなってるんですかあの薬」
「お、興味あるか?といっても俺にしか作れないがな」
「ダメですか…作って弟にと思ったんですが…」
「朧サンwww最高wwてか朧サン製薬できるのか?w」
「人間成せばなります」
「wwそれwwwできないってことだろwww」
やっぱおもしれぇww、と彼は爆笑した。…僕、よくお兄様方に爆笑されるなぁ…嫌じゃないけど…。……僕そんなに面白いところあるかな?
「wwwはー……欲しかったらやろうか?薬」
「えっあるんですか?」
「もちろん。どれくらいいる?500mlくらい?」
「多いわ!ペットボトル一本分ですよ!?……10mlくらいでいいです。あと解毒薬もください」
「えっいる?」
「いるに決まってんだろ何言ってんだアンタ」
「wwwwwww……お代はこれ使った弟君のデータでいいぜ?」
…そんな気はしてましたよ…。…データか……うーん…。
「……データ、動画でもいいですか?」
「動画?撮れるのか?」
「現役公安職員の持てる全ての技術を使ってカメラを仕込んでみせますよ。というか僕も見たい」
「マジで最高だわアンタwwwwww」
…さて、いつやろうかな…。ワクワクしてきた。
「あ、朧サンの分もいる?」
「要ります、ください。…次は維さんに使います」
「さすがww朧サンwww…あ、そっちのデータも「それはダメです」
乱れた維さんは僕だけのものですので。
【暴食暴飲僕困惑】(暴食兄様)
「あ、お姉さーん!!」
「あいるちゃん!」
『お姉さんの次のお休みの日、スイパラ行かない?』と誘われたのが2週間前。僕は速攻で『行く!!!!』と返事をして、仕事を片付けまくった。絶対行くんだ…!何が何でも行くんだ…!と鬼気迫る様子は、他の職員から結構怖がられた。みんなごめんね…。
そして待ちに待った当日、待ち合わせ場所であいるちゃんを待っていると、彼女は時間通りにやってきた。今日も可愛いなぁ…。
「ごめんね、待った?」
「んーん?今来たところ。…あいるちゃん走ってきたの?髪がちょっと乱れてるよ?……ちょっと失礼」
「直してくれてありがとー!…出かける時にお兄ちゃんが『俺も行く』って言ってきて…止めてたら遅れそうで…」
「別に遅れてもいいのに。その分、楽しみが増すから。………でも、急いで来てくれてありがとう。嬉しいよ」
「……出た…お姉さんのイケメンムーブ…」
…イケメンかなぁ…?イケメンって維さんやあいるちゃんのお兄様みたいな人のことじゃない?ほらあいるちゃんの隣にいるそのちょっと気怠そうにしてるけど整った顔の人みたいな………んん?
「あれ…?あいるちゃんのお兄様…?」
「ええっ!?ついて来ちゃったの!?」
「朧サンどーも。…俺もついて行っていい?」
「僕はいいですけど…あいるちゃんは?」
「い、いいの…?」
「もちろん。そっちの方がもっと楽しいでしょ?」
「…っ、うん!!お姉さんありがとう!!」
あいるちゃんの笑顔…プライスレス…!!
嬉しそうなあいるちゃんを見ると、僕も自然と笑顔が溢れる。本当に可愛いなぁ…あといい子だよなぁ…。
「尊いわぁ…」
「わかる。朧サンめっちゃわかる」
「?何が?」
「あいるちゃんは気にしないで。…そろそろ行こうか」
「…僕、スイパラ初めてなんだよねぇ…」
「えっそうなの?」
「人生損してねぇ?」
「そ、そこまで…?……これ、自由に取ったらいいの?」
「そ。皿に取ったら全部食わねぇとダメだからな?」
なるほど……じゃあ程々に取ろう。どれくらい食べれるかわかんないし。
オペラと、モンブランと…あ、ゼリーもある。あとは……あ!苺のタルト、これにしよう。
「朧サン、そんだけでいいの?」
「とりあえずは。あとは自分のお腹と相談し、て……わぁ…」
すごい…取ったスイーツでお兄様が見えない…。めちゃくちゃ山盛りだ…。食べれ……ますよね…お兄様だったら余裕ですよね…うん…。というかどうやって盛ったのそれ。
「す、すごい…」
「お兄ちゃん毎回食べ放題に来るとこんな感じなの…。お姉さん、びっくりしたよね。ごめんね驚かせて」
「ううん…全然……むしろ連れてきてくれてありがとう…」
「?う、うん…お姉さんどうしたの?」
お兄様は山盛りのスイーツを持って席に戻り、手を合わせてから食べ始めた。綺麗な所作で目の前のスイーツをどんどん胃の中に収めていくお兄様を見ると……うん、お腹いっぱいになる…。
「いい食べっぷりですよねぇ…羨ましいくらい…」
「ん?お前ら食べねぇの?」
「お姉さん、食べよ?」
「そうだね………もう若干お腹いっぱいだけどね…」
「美味しかったー!ご馳走様でした」
「ご馳走様でした」
僕とあいるちゃんはお腹いっぱいになったけど…お兄様はまだまだ食べるらしい。…お店の人、『まだ食べるの!?』みたいな顔してる…。頑張れ…。
「お前らもう終わり?早いな」
「あはは……。……お兄様、次持ってきましょうか?」
「いいよいいよ。あいるの友達に使用人みたいなことさせたくねぇし。あいると一緒に座ってな」
じゃ、取ってくるわー、と彼は大量の皿をキャスター付きのワゴンに乗せてゴロゴロ押していった。い、いつの間にあんなもの…。…というか、使用人って…貴族か?……………あ、そういえばあいるちゃん達って王族か。忘れてた…。王族なら使用人の100や200いるよねぇ…。
「……あいるちゃん達の使用人か……いいな…やってみたい…」
「お姉さんがお城のメイドさん?………ちょっと良いかも…可愛い…」
「メイドさんがいい?じゃあメイドさんにしよう。維さんが作ってくれたメイド服もあるし。…お城では、姫様って呼ぶべき?それともあいるお嬢様?」
「今までどおりがいい!あと敬語もなし!」
「ふふ…じゃあそうしようか」
再就職先が決まってしまった。…でも絶対楽しいだろうなぁ…あいるちゃん達の使用人…。
「…でも、維さんからの許可がいるかも」
「…そうかもしれないね…。つなぐくん、嫉妬とかしちゃいそうだし…」
「うん………というか使用人として働きたいとか言ったら、『私の使用人になれば良いだろ。メイド服新しいの作るか?』とか言いそう…」
絶対そのまま主従プレイ始まるな…。ご主人様にご奉仕(意味深)とか……………楽しそうだな、今度提案しよう。
「……いや、いたずら(意味深)されるメイドとかもありか…?」
「?お姉さん、何か言った?」
「ううん。何でもないよ?……お兄様、隠しきれてないですよ。笑ってるの」
「あ、お兄ちゃんおかえりー…どうしたの?」
「wwwwい、いや?wwwなんでもねぇwww」
「?そう?ならいいけど…。……あ、私飲み物持ってくるねー」
あいるちゃんはカップを持ってドリンクバーへ向かった。
「wwwwマジでww朧サンおもしれぇわwwwww」
「…お兄様方からよく言われますけど、そんな面白いですか?僕」
「めちゃくちゃ面白いwwww…あ、嫌…だったか?」
「いえ特には…。……皆さんが笑ってるところ見れてお得なのでむしろよっしゃぁって思ってます」
「wwwそーいうとこwwそーいうとこ面白いんだってwww」
「こういうところですか…」
もう最高www、と彼はケラケラ笑った。…こういうところか………うん、よくわからないや。まぁいいか。
「はーwww笑った笑ったww…これからもあいると仲良くしてやってよ。あいつ楽しそうにしてるから」
「……僕なんかでよければ喜んで」
「朧サンなんか、じゃなくて朧サンがいいんだって。おもしれぇし、優しい?んだろ?あいるが言ってた。……あいるを傷つける奴ならぜってぇ許さねぇけど、朧サンそんなことしないだろ?」
「当たり前です。あいるちゃんを傷つける奴はありとあらゆる手を使って処します」
「wwwwそれそれwwwそーいうこと言ってる朧サン、嘘ついてるようには見えねぇからさ。…信用してんの、俺らは」
よろしくな?、と僕を見てニヤッと笑う彼の目は笑ってなかった。『信用裏切ったらわかるよな?』と言われてる気がした。
「お任せください。……お兄様方の信用裏切ったら、腹でも切りますよ」
「wwwカッケェwwwそれポップコーン食いながら見てていい?www」
「うわぁ悪趣味……。別にいいですけど」
「いいんだwww」
…お兄様方、やっぱり怖いわ。……まぁ、そこが良いけど、とか言ったら…また爆笑されるんだろうなぁ…。言わないでおこう…。