「会いたいな…」
最後会ったのいつなのだろう
半年前だ、結構最近じゃない?って思われるかもだけど、私からしたら結構長い
誰に会いたいかって『恋人だった』ひと、今でも忘れられないあの人の事―
✴✴✴
―1年前―
今日は、週一のデートの日。あさからどんな格好で行こうかな〜なんて考えながらウキウキで準備をして、家を出て、集合場所に向かう。
(彰人、今日はどんな格好してくるのかな、)
とか、
(今日の格好褒めてもらえるかな、)
とか、いろいろ考えながら。
集合場所に付けばもう彰人がいる。いつも私のほうが来るのが遅くて申し訳ないななんて思いながら。
「彰人!」
彼の名前を呼ぶ。
すると彼は自分では気づいてないかもしれないけど、嬉しそうにこちらを向いていつもなら私の名前を呼ぶ…"いつもなら"…
「……」
返事がない…え?人間違えた?いや間違えるはずがない。だって、あんなオレンジ頭、他にいないだろう。
「彰人…?ごめんくるの遅かったよね」
「…」
「彰人?」
「あ…杏わりぃボーっとしてた。別にくるの遅くねぇよオレがいつも早すぎるだけ」
「え、?あ…そうなんだ…!」
その時のわたしはただ、彰人は"ぼーっとしていた"んだとしか思ってはいなかった。
「きょ、今日はどこ行くの…?」
「…?あー今日は……ち」
「へ、?今どこって…?」
「あ?だからオレん家って」
「え…?なんで…?」
え?ここまで来て、ここで集合して、彰人の家?
「ちょっとはなしたいことがあって、さ、」
話したいこと?ここじゃだめなの…?わたしなんかした?なんて、言えなかった。理解が追いつかない。
「ま、とりあえず行こうぜ…。」
「う…うん」
✴✴✴
―彰人の家―
「飲み物持ってくるから適当に座っとけ」
わかった。なんて、聞こえるか聞こえないかくらいのおおきさで返事をした。
「ん、紅茶で良かったか?」
「ぇ?ぁうん、」
返事が曖昧になってしまう。
彰人が何を話し出すのかわからなくてずっとどきどきしてる。彰人がなにか話してるけど頭に入ってこない…。
私なにかしちゃったかな…なんて考えていると
「なぁ、杏」
わたしを呼ぶ声が聞こえてきた。
「な…なに?」
「別れよう」
え…今なんて?別れる…?どうして…?理由を聞きたいのに言葉が出てこない
「単純に言うと、冷めたんだよなお前に」
どうしよう涙が溢れ出て止まらない。
「さ…めた…?」
「そう。さめた。なんかどうでもいい〜って思えるようになったわ」
さめたなんて言葉言われなくても伝わってくる…目でわかるあきとの冷たい目。怖い。息が苦しい。
「いや…っ…だ…よっ…」
「は?なんでだよしょーがねぇじゃん」
しょうがないじゃん?なにその理由わけわかんないんだけど…!
「なに…それ…おかしいでしょ!?」
「は…?」
「冷めた?それだけの理由で?そんな人だなんて知らなかった…」
「杏…?」
「最っ低!」
そういって、彰人の家を飛び出した。これで良かったのかな、いや、これで良かったのだ。
✴✴✴
―半年後―
もうこの頃の私の中には『彰人』なんて記憶はなかった。
「ふふっ今日はこはねと久しぶりのお茶会!楽しみだな〜!」
そう今日は大好きな相棒とのデート?の日
"あの時"みたいにウキウキで、待ち合わせ場所に向かう。
「あ、あんちゃん!」
こはねの声だ、満面の笑みで振り向く。
「こはね〜!久しぶり髪伸びたんじゃない?」
久しぶりなんて言っても半年ぶりだけど。なんて思いながら高校生の時みたいにこはねを抱きしめる。こはねが「苦しいよ〜」ってっ言ってるから、抱きしめるのを辞める。
「杏ちゃん!久しぶり!杏ちゃんこそ髪伸びたんじゃない?」
こはねも聞き返してくる。
「まぁ〜たしかに伸びたかも!」
そりゃそうだろうアイツと分かれてから美容院に行っていないだって、髪切っても褒めてくれる人なんていないんだから。
「ささっ!はやくカフェいこっ!」
「うん!そうだね」
✴✴✴
―カフェ―
大学のことやらこはねと冬弥の話を聞いたりして、盛り上がっているところだった。
「ねぇ、杏ちゃん。」
「ん?どうしたの?こはね。」
すごく真剣な顔でこはねが私の名前を呼んできた。
「あのね、一つだけ話しておかないといけないことがあって、」
「話しておかないといけないこと?」
「うん、東雲くんのことなんだけど」
「え?彰人のこと…?」
なんで今さらあいつのことを?
「あのねまだ怒ってるかもしれないけど、聞いてほしいんだ。」
こはねが真剣にわたしに頼んでくる
そんな顔されたら聞くしかないじゃん
「あのね東雲くんが杏ちゃんをふった日のちょうど一週間前かな、私達の家に東雲くんが彰人きたんだよね、」
「え?彰人が?」
「うん。」
✴✴✴
―半年前―
(こはね視点)
「とつぜんわりぃちょっと相談事があって」
「相談事?」
東雲くんが相談事なんて珍しいな、なんだろう杏ちゃんにプレゼントでもするのかな。
なんてワクワクしていた。
「オレさ、杏と別れようと思う。」
「え?どうして/だ?」
私と冬弥くんが一緒に驚く。
「それがさ、最近の杏、なんか楽しくなさそうなんだよ…それが、オレといっしょにいるときだけ。」
え?杏ちゃんが楽しくなさそう?
「東雲くん、それはないと思うよ、だって私が杏ちゃんとカフェに行くときいつも嬉しそうに東雲くんのお話してるから。」
「こはね…でも最近いつ行った?杏とカフェに」
いつって、
「1…ヶ月前…だよ」
「ずい分前だな。それじゃ杏が最近どうかなんてわかんねぇだろ」
「彰人、その言い方でこはねを責めるのは良くない」
「わりぃ、」
東雲くん隨分焦ってるな…
「ホントはさオレも別れたくはねぇよオレはあいつのこと…」
あ、その先は言わないんだ。
「彰人それなら白石に直接聞けば良いんじゃないか?」
冬弥くわそれは聞いちゃ…
「オレだって聞けるんだったら聞きてえよ、でもいざとなると聞けねぇんだよ」
東雲くんが泣きながら言う。あぁ相当つらいんだな…
「東雲くん…別れるか別れないかは東雲くんの判断に委ねるよ、でもね、これだけは覚えておいて欲しい。あんちゃんは東雲くんのことずっと大好きだと思う。」
「こはねになにがわかるんだよ…でも、もう少し考えてみる」
そう言って東雲くんはかえっていった。
「解決したのかな…」
「それはわからないが、少し嫌な予感がするぞ」
「うん、わたしも」
✴✴✴
「杏ちゃん、きっと東雲くんは自分といるときの杏ちゃんが楽しくなさそうなのが不安になっちゃって、これ以上傷つけたくないって思ったんじゃないかな。」
「彰人がそんなこと言ってたなんて、私…!」
「杏ちゃん自分は責めちゃだめ」
「でも私思いっきり最低なんて言っちゃたよ」
最低だ、わたしあの時焦ってて、あんな事ううん違う彰人を不安にさせるような事をした私が悪いんだ。
「ねぇ、こはね」
「どうしたの?あんちゃん」
「彰人に、さ、より戻したいっていったら怒るかな。」
「杏ちゃんがその気になってくれてよかった、!」
「え?」
どういう事?まるで、彰人はずっとより戻したいみたいじゃん。
「昨日ね、またって言うとあれだけど東雲くんがまた家にきたの、そしたら東雲くんが杏ちゃんにあいたいんだけど連絡先わかる?って」
あ、そういやあわたし、彰人のあの衝動で消しちゃったんだっけ。
「それで?」
「あっそれでねわたし明日杏ちゃんに会うからきいてみるねっていったら、東雲くん過ごし嬉しそうにありがとうって。」
嬉しそうに…?
「ねぇ杏ちゃん来週の水曜日なら空いてるって、どうする?」
「…く。」
「え、?」
「いく!それで、ちゃんと謝って、自分の気持ちを伝える…!」
「うん!いいんじゃないかな!」
なんだろ…少し楽しみだな…
✴✴✴
―1週間後 水曜日―
ドキドキするけど、私がいくって言ったんだ。ここで、引き返しちゃだめ!
あの時みたいに家を出て、待ち合わせ場所に向かう。
(思い出しちゃうなあの日の事)
いた。思い出す見慣れた後ろ姿。あの時みたいにはなしかける。
「彰人…?」
彼の名前をよぶ。
「あ…ん?杏か?お前ほんとに」
急に彰人に抱きつかれた。
「彰人ど、どうしたの?」
びっくりしたけど、それより先に久しぶりの彰人のぬくもりをかんじて、嬉しいって思っちゃった。
「あ…わりぃ…」
「ううん大丈夫…。あのさ、ごめんね。彰人」
彰人びっくりしてるな。
「いや、杏が謝る必要はねぇよ、オレが勝手に勘違いして、あんなこと言ったんだから。」
「ううんちがうよ…彰人を私が不安にさせちゃったからそれなのに私が最低なんていって、ごめっ…!」
謝ろうとした瞬間言葉を遮るように彰人がキスをしてくる。
「んっ…」
どれくらいそのままでいただろう大して長くはないと思うけど、わたし達からしたらずいぶん長い時間だった。
「それ以上…あやまるなよ…杏は、悪くない」
また抱きしめられる。
そろそろ―言わなきゃな…なんて考えていたら
「なぁ杏。」
先に口を開いたのは彰人だった。
「なに?」
「もう一回、やり直してくれるか?こんなオレだけど、オレさお前いや、杏と別れてからもずっと忘れられなかったんだよ。杏のこと。だから…」
「わたしも同じ気持ち…だったよ!」
彰人がこれ以上自分を責めないように話を遮って返事をして、抱きしめ返す。
「杏…」
彰人がもっと抱きしめる力を強くする。もうどこにも行くなって言ってるみたいに。
「そんな強く抱きしめなくても、どこにもいかないよ…。」
一向に力は弱まらない。でもちっちゃい声で「ん」って返事が聞こえた。あ、聞こえてはいるんだな。
「彰人、大好きだよ。」
「オレも、一生大切にする。ぜってぇ離さねぇ」
「離れる気なんてないし!」
「ははっ/ふふっ」
やっぱり幸せだな…この人といると。もう絶対離れない!
✴✴✴
―1年後―
(こはね視点)
「杏ちゃん/白石、東雲くん/彰人、婚約してるおめでとう!」
「ありがとう/な」
「冬弥くんもう杏ちゃんは白石じゃないよ?」
「ああそうだな」
私と冬弥くんに祝われて、嬉しそうに笑う二人がいたのはまた別のお話。