流行りのお茶菓子「本日のお茶菓子は、私なりに流行り物を調べて取り寄せてみたんです」
指を揃えた丁寧な所作で、白いティーポットから彼女お気に入りのアプリコットティーがカップへ注がれる。
とっさに触れたくなるくらい綺麗な指を眺めながら『そいつは楽しみだ』と返す。
ティーを淹れた後、元気っ子のデイジーならジャーン! と自ら効果音を発しそうな場面で、ロゼッタはケーキ屋の白い箱を開けた。
中に入っていたのは、ぷっくり太ったようなスイーツ。
「へー、マリトッツォか。女子の食べ物って感じでオレも初めて食べるな」
「なんだか、サイズ感が星の子たちのように見えまして」
彼女は大切な子供たちを思い浮かべたようだ。一方で彼はたぬきスーツ姿の彼女を想起していた。
まるまると鎮座するスイーツは、たぬきの時のかぼちゃパンツに似ていて、奇妙な愛着を湧かせた。
(おわり)