鋏でじょきじょきする桂城くん いらない書類なら始めから書かせるなと言いたい。
桂城は不満を直接口にすることなく、手だけを動かし続ける。じょきじょきじょきじょきと厚手の紙を切るとき独特の音が室内に響く。
桂城が切っているのは先日深井とともに書き上げたレポートだ。上官であるブッカーに提出したところ、おおむね好意的な評価を与えられたそれである。それが何故今桂城の手元にあり、切り刻まれているのかというと、シュレッダーにかけておけということだった。
特殊戦にシュレッダーがない訳でもなければ、経費削減のためにそれが使えない訳でもない。桂城があまりにもうわの空で、他の仕事が手につかない状態なので集中力を取り戻せるまでひたすら紙を切っていろということだった。
命じたのはブッカーである。「正座で写経か、椅子に座って紙を切り刻む作業、好きな方を選ばせてやる」とどっちもどっちな選択肢を突き付けられ、桂城は椅子に座って人力シュレッダーになることを選択したのだ。
今桂城が切り刻んでいるのは自分が書いたレポートである。一応ブッカーにも「ジャムに関するレポートなのに切ってしまっていいんですか」と尋ねた。その答えは「そいつはコピーだから安心して思う存分切り刻め」だった。わざわざ桂城に切らせるためにコピーまで印刷したらしい。資源の無駄遣いである。
その腹立たしさを鋏と紙にぶつける。