漂流 ある日、夜中の散歩で浜辺を歩いていた時のことなのだけれど。僕の家は市内にもいくつか持ち家があってね。その日はたまたま海の近くの家だったんだ。体調もさして悪くなかったし、使用人たちも最低限の人数しかいなくて、まあ僕にしては結構監視――いや、この言い方だと囚人みたいだね。見張りが手薄だったんだ。これでもまだ囚人のようだけど。
ああ、それでね。この海辺の近くの家はあまり寄り付かないんだ。その日もなんでそこの家にいたかはよく覚えていないんだけど、とにかく僕はそこにいた。それで、抜け出したくなったんだ。日中はどう頑張ったって使用人の目があるからね。ものを食べるにしても、本を読むにしても、寝るにしても。それに、夜の海ってなんだか良いだろう? うーん、君には分からないかな。ともかく、使用人たちも僕が寝たことを確認したら休憩室で睡眠をとるんだ。ばかだね、目を閉じて息を吸ってれば寝たと思ってる。案外外に出るのは簡単なんだ。鍵の在り処も知っていたから、しっかりと鍵をかけて出てきたのさ。
月明かりがとても煌々としていてね、まるで昼間みたいだったよ。一人で夜に歩くのは気持ちがいいんだ。海も砂浜も人っ子一人いない。一人は好きだ、せいせいするんだ。で、それで話を戻すけど、砂浜で君を見つけたんだよ。歩いているところにぽつねんと、君がいたんだ。最初は魚の死骸かなにかかと思ったけど、全然大きさが違うって思ってね。近寄ったら、人間みたいなかたちをしてたから、思わず揺さぶってみたんだけど。
「……」
ああ、そうだね。よく分からないよね。君は砂浜で行き倒れてた。事実そうでなくても、僕の目にはそう映ってしまったから、便宜上このように表現させてもらうね。そう、君が人っ子一人いない僕だけの砂浜に、落ちていたのさ。
――そこで生まれ落ちたかのように、眠るようにいたんだ。
「落ちて……」
うん。妙だね、あの時間に、あんな場所で? 疑問には思ったけど、でも、落ちてたからね。君は。
「……ありがとうございます」
……お礼なんてしなくていいよ。僕は倒れてる君を見つけてこうして連れて帰ってきてしまったからね。これは誘拐……に、なるのかな。困ったな。でも君こそ、あそこでずっと倒れてたら困るだろう?
「そう、ですね。えっと、俺、これからどうしたらいいんでしょうか」
さあ?
「うう」
いや、ごめんね。少しいじわるだったかな。あまり他人と、そうだね、君ぐらいの同年代と関わることは中々なくて。少し対応を間違えたかな。許してくれるかい?
「そ、それはもちろん! あなたは命の恩人ですから」
命の恩人か……。
僕は完全に行き当たりばったりだったのだけど、君の命が救えたなら良かった、と言えるかな。ええと、君、名前は?
「つ……つむぎです」
つむぎ。そう、いい名前だね。優しい感じがする。
「ありがとう、ございます」
いいや、お礼なんていいさ。
おや、どうしたんだい? お腹が空いたのかな。生憎キッチンにはろくなものがなくてね。君、冷めてぼそぼそしたパンとか食べられるかい? それで良ければ出せるけど。
「いえ、違うんです! あなたの、名前を……」
僕の名前? 今まで言ってなかったっけ。ううん、言ってないか。ごめんよ、つむぎ。
僕の名前は英智だよ。まあ、覚えてても意味はないからね。そういう名前だってなんとなく認識しててくれればいいさ。
「英智くんっ」
つむぎが、ずいぶん嬉しそうに僕の名前を呼ぶ。ふわっとしている髪の毛が感情を表すように跳ねた。
そうだね、ばっちり僕の名前だ。ところでつむぎ、君は、人なのかな。
「……?」
素っ頓狂な質問かもしれないね。僕、これでも病弱で普段は君みたいな人を背負って歩くなんて到底無理なんだけど……。君を抱きかかえてみたら、君はすごく軽かった。おかしいよね。質量がおかしいんだ。しっかり実在してるのに、中身が伴ってない。どういうことなんだろう、これは。臓器があるなんて、あの軽さを体感したらとてもじゃないけど思えないよ。それなのに君は声も出せるし、さっきだって汗みたいなものを出していたよね。
もしかして、とても精巧な人形、とかなのかな。君って。
「俺は……俺の事、よく分かってないんです」
分からないの? 君自身のことなのに。名前は覚えてたでしょう?
「ご、ごめんなさい。でも、誰かのために傍にいなくちゃいけないっていうのは覚えてて」
ふぅん。
その誰かって、誰?
「…………」
分からないんだね。ああ、いいよ、そんなに申し訳なさそうにしないで。そうだ、じゃあ、僕のためにいてよ、つむぎ。
「英智くんの、ために……」
そうだよ、何も覚えていないんだから、なんら不都合はないだろう? 僕だって暇つぶしさ。思い出したら去ればいいじゃない。
「……」
君、笑うとかわいいね。
この家に僕はあと一週間は滞在するからね。ん? ああ、無理は言ってないよ。僕が気に入ったからもっとここにいたいって言ったんだ。どっちにしろここだって家だし、あの使用人たちは僕の体調が良ければ大抵の言うことは聞くんだ。今日だって、この部屋にはなるべく近づくなって言ってあるからね。安心してつむぎと話せるよ。
……体調が悪くなったら? ああ、最悪だね。彼ら、強引もいい所だよ。それが彼らの仕事だと分かっていても許せないことはあるのさ。
もう、いいでしょ、この話は。僕はそれよりも君のことが気になるな。身体は人間の肉体のようだし、僕が疑った人形という説は消えそうだ。関節、全然球体じゃないし。
「俺が人かどうかって、英智くんにとって重要ですか?」
うーん、さして重要じゃないかな。言ったけど、僕、ひとりっ子だからさ。同年代の話し相手ってだけでとても嬉しいんだ。だからこれは、君との共通の話題探しとでも思ってくれていいよ。ただ、僕自身は君の正体が気になるけどね。分からないものほど追い求めたくなるたちなんだ。君が人じゃないことは分かってて、じゃあなんなんだろうって気になってしょうがないよ。
「へー……」
髪の毛、ふわふわだね。うーん、ちゃんと生えてる感じだ。
「えー!? 生えてますよっ」
あはは、ごめんごめん。植毛だったりするかと思って。
「人形説は消えたんじゃないんですかぁ!」
念には念を、と言うんだよ、つむぎ。
でも君って、体温もない感じだし心臓の音も聞こえなかったよね。その割には、食べ物は食べるし水は飲むし、瞳は潤ってるし。それに、僕と同い年くらいに見える。実際の年齢は君も分かってないし。へんな生き物だね?
「ぼ、ぼろくそ言いますね……。まあ、否定はしませんけど」
君みたいな生き物が、世の中にはたくさん紛れてるのかも。僕が知らないだけで。
ねぇ、そうだったとして、いわゆる「お仲間」に会いたいと思う?
「ええ? うーん、そんなには」
そうなの? てっきり会いたいかと思ったけど。
「だって俺って、今は英智くんのためにいるんですし。仲間の人も本当に仲間か分かりませんから」
……。
そういえばつむぎ、君ってあの浜辺に落ちる前の事とか覚えていないの?
「あっ、露骨に話題を逸らしましたね、英智くん! もしかして照れてます?」
うるさいよ。それで、覚えているの?
「いやあ、覚えてないですね。英智くんが抱き上げてくれた時は微かにあるんですけど」
ふぅん。それじゃあ余計に謎が深まっただけだね。君って本当にへんな生き物だ。
「よく言われます」
僕にでしょ。
つむぎ? 何を見ているの? ああ、テレビか。君もこういうの興味あるんだね。僕? 僕は、日々樹くんが出てるテレビなら見るよ。
「ひびきくん? 友達ですか?」
友達だなんてとんでもないな。僕は彼の大ファンでね。アイドルをしてるんだ、彼。あ、これにも出てる。ほらほら、ここに座っている綺麗な髪の子だよ。パフォーマンスを見たら、きっとつむぎも驚くよ。すごいんだから、彼。
「ふふっ」
なあに? なにか変だったかな?
「ううん、英智くんが楽しそうで、俺も楽しくて」
そうなの? なんだか変な感じだな。初めて言われたよ、そういうの。
ねえ、つむぎ。夕食になにか食べたいものはある?
「英智くんがくれるものならなんでも」
じゃあ、今日もおまかせでいいか。使用人たちもね、最近僕がすごくよく食べるって喜んでるよ。健康の一途をたどってるんだって。君にあげてるだけで、別に食べる量は増えてないんだけど。
あ、コマーシャルが明けた。つむぎ、次は日々樹くんがパフォーマンスをするから見てて。本当に、美しいんだよ。
いいかいつむぎ、絶対にここ二日間は外に出ちゃいけないよ。なんでかって? 理由は明確だよ、外のこの暗雲を見て。嵐だって。
嵐? ええと、風がびゅうびゅう吹いて、雨がざあざあ降って、それで時折雷なんかもバコーンッて……。あはは、そんなに怯えないで。うん、そうだね。昨日までは晴天だった。ただ天気だってずっと晴れてるわけじゃないからね。それと同じで、大体二日間でこの嵐は明ける予定だから、心配しなくていいよ。つむぎは嵐なんて初めてだよね? いつもと変わらず部屋の中でお話していよう。怖くなんてないさ。
うん? ああ、あれが雷だよ。今のは結構近いね。
「ここに落ちたらどうしましょう」
ここに? そうしたら、みんな黒焦げで家も火事になるだろうね。あははっ。
「にこにこしながら言うことじゃないですよ〜」
そうだったらいいのにと思って。
僕、別に死ぬことに恐怖は無いんだ。今だって、生きてるのか死んでるのか分からないよ。もしかしたら、気付いてないだけでさっきの雷で死んだのかも。感電死。
「生きてます」
そうかな。
なあに、頬になにかついていたかな。
「あたたかいので」
あったかい? そっか。じゃあ生きてるね。
つむぎは……うーん、なにも感じない。冷たくもないしあたたかくもないね。常温。うん、常温って感じだ。別に変じゃないと思うけどね。だって君、変が当たり前でしょ。
「それじゃあ、俺の方が生きてるか死んでるか分からなくないですか?」
じゃあどっちも生きてることにしよう。変でも生きてる。それでいい?
「英智くんが言うのなら」
ふふん、よろしい。
わっ、びっくりした。窓だね。あまり新しくもないから、この家。ちょっと音が立っただけだよ。つむぎは怖がりだねえ。そんなんで野生で生きていけるのか心配だよ、僕。
……うーん、でも案外、君みたいな子の方が世渡りはうまいのかも。なんか君って目を離しちゃいけない気がするからさ。
ついかっこつけたくなっちゃうんだ。「大丈夫、僕がついてる」って。
「言ってくれないんですか?」
……。
大丈夫、僕がついてる。
「頼もしい」
からかってるでしょ。
「いいえ? 本当に頼もしいですよ、英智くん」
本当かなぁ……。
ん、んん。今度は停電だ。今日は忙しいなぁ。え、あぁ。急に暗くなったのはさっきの雷とか風のせいだろうね。よく知らないけど、ブレーカー? っていうのが落ちると家中の電気が余すことなく消えちゃうんだ。いや、心配しなくていいよ。どうせすぐおさまるからね。
心配性だなあ、つむぎ。僕なら目の前にいるよ。ベッドで飛び跳ねて見せようか? ……確かに、君だと吹っ飛んじゃうかもね。あはははっ、試してもいい?
「だめですっ」
ちぇ、こわがり。
あ、電気、戻ったね。多分使用人が来るよ。ベッドの下に、早く。
おや、つむぎ。君って歌が歌えるんだね。
「テレビで聞いたものの見よう見まねですけどね」
君、歌うまいね。きちんと音程もとれてるし、声も優しい。
「本当ですか? 嬉しいですっ、ありがとう、英智くん!」
今はそんな歌が流行ってるんだね。僕、テレビを結構見るのにそういうのは全然覚えられないんだよ。聞いた時に「ああなんか流行ってるよなあ」ってちょっと思うくらい。
「じゃあ俺が英智くんのために歌ってあげますね。頑張って覚えます」
つむぎが? 嬉しいな。でもあんまり大きな声だと人が来てしまうから、気を付けようか。まあ、僕が歌ってたってことにしてもいいんだけど、あの人たち、それはそれで不審がりそうだし。
「英智くんも歌いましょうよ~」
ちょっと、さっきまで僕のために歌うって言ってたじゃない。
「二人で歌ったら楽しいですよ、きっと」
……そうかな。そういう、ものなのかな。
「だって俺、英智くんと一緒になにかするのがすごく楽しいんです」
そう、なの? ええと……。ありがとう?
「疑問形にしなくても!」
あはは、ごめん、つむぎ。ありがとう。
でも、どうせ歌うなら僕の好きな歌にしたいな。それなら僕が教えられるし。端末を持ってこようか。
うん、まあ、テレビと変わらないよ。おおよそね。
「りゅうこう? はいいんですか?」
うん、流行はいいよ。どうせ廃れてしまうもの。僕の好きな歌は、ずっと僕が好きだから、僕の中で廃れないんだ。つむぎもその方がいいと思うでしょ?
「はい、頑張って覚えます」
ふふ。この曲、きっとつむぎも好きだよ。覚えたら二人で歌ってみよう。
「楽しそうです」
そうだね、実は僕も、子供っぽいけどちょっと楽しみなんだ。君が僕の好きな歌を覚えてくれるのも、二人で歌うことも。
ずっと歌っていると喉が疲れてしまうし、飲み物を持ってきてもらおうか。
そうだ、つむぎ、知ってる? 蜂蜜は喉に良いんだよ。君にとっていいかは分からないけど、少なくとも人間にとっては良いんだ。紅茶と蜂蜜を持ってきてもらおう。
君、気に入りそうな気がする。
近頃の僕は結構調子がいい。親がふざけて作ったとしか思えない「英智くんゲージ」の数値も安定しているし、体調は薬を飲んでいれば全然へっちゃらだ。夜中に苦しくて目が覚めて一人で枕の位置を変えて寝るとか、そういうこともあまり無くなった。
つむぎが横で寝ている。つむぎは僕にとっていい友人だった。話を聞いてくれる。ふざけると、全然怖くない顔で叱ってくれる。一緒に食事をしてくれる。天気がいい日の夜は、つむぎが落ちていた海岸に散歩しに行く。
今日はまさしく海岸に散歩に行った日で、つむぎが月明かりの薄暗い砂浜で、流れ着いたこんぶとかよく分からない海藻を食べられるか聞いてきたり、シーグラスとか桜色の貝殻を手のひらにたくさん乗せて僕に見せてくれた。小さな桜色の貝を一つだけもらった。
僕たちは海岸の先の先まで行こうとしたのだけど、夜で冷えていて風も強く、月の光が氷のようだったので、海風でつむぎがどこかへ飛んでいく前に早急に帰ってあたたかい紅茶を飲んだ。
キッチンは暗くて空気がひんやりしていて、まさに「寝ている」感じだった。
「初めて会った日みたいですね」
そうかな? 僕ら、何回かあそこには行ってるだろう?
「あの日はこのくらい寒くなかったですか? 英智くんよく俺を背負って帰れましたね」
初めて会った時にも言ったけど。君、すごく軽いんだもの。羽毛が詰まってるんじゃないかってくらい。
「俺って本当、何でできてるんだろう。我ながら気になります」
切ってみる?
「か、勘弁してください……」
羽毛が出てきたらさ、君って羽毛人間ってことなのかな? 羽毛布団みたいな。ああでも、ふふ、中から何か出てくるってまるでピニャータみたいだね。はずれのピニャータ。
「なんかすごく……」
お菓子が出てくればいいのになぁ。
「ねえ英智くんっ? そういうのってよくないですよね!?」
そっか、つむぎ、ピニャータとか知らないっけ。僕も小さい頃にちょっとだけどね、見たことがあるんだ。その場にいたのかなにか映像で見たのかはもう覚えてないけど、誕生日の子がね、動物を模した箱を棒で叩いて壊して、中から出てきたお菓子を拾うんだよ。
「う、うーん」
おや、理解を示せない? 異邦人には難しいかな。
「俺、今度は異邦人ですか!?」
あははっ。でも妥当でしょ。つむぎは人のかたちをしてる人じゃない生き物なんだよ? 人形じゃないなら、姿形のそっくりな別のなにかだ。僕はまだその「なにか」が宇宙人なのか異邦人なのか地底人なのか、分かりかねているからね。とりあえず異邦人かなって。
「もう、分かりましたって……。早いところお部屋に切り上げましょう? 見つかったら大変なんですよね?」
うん。そうだよ、すっごく大変。君も僕も。そろそろ言い訳考えとかないとまずいかな。
「考えてないんですかっ」
うん。君上手いこと隠れたりして、多分あの人たち全然気づいてないもの。
「ええーっ、ちょっとなんでもいいので考えてくださいよ。俺、そういうのめっぽうなんですから」
そうだね、知ってる。考えておくよ。
つむぎが安らかに寝息を立てている。肺がないのに、息を吸う。吸って吐く。皮膚に体温は宿っていない。
僕はつむぎに会った日から、なんとなく別れの日を予感している。それは次の瞬間かもしれないし、三日後かもしれない。もっとずっと後かもしれない、とも。
どうしたって本邸には戻らなくてはならないし、家庭教師たちも課題を持て余しているに違いなかった。つむぎに鍵の場所は教えてあるし、僕が出て行ってつむぎが着いてくれば良いだけだ。外に出て待たせて、車を出してもいいかもしれない。
友人を招くから、迎えに行って。海辺の近くの家にいるから。
ただ、その画策も、つむぎが使用人に見つかった時の言い訳も使うことはなかった。つむぎは、僕が寝て起きた次の日にすっかり消えていたからだ。羽の一本もない。
隣に寝ていた形跡、というか、僕がつむぎの隣で寝ていたので不自然な空白はあったのだけど、僕の寝相と言えないことも無かった。
もちろん、つむぎには体温がないので、いつ消えてしまったのかも分からない。中身は結局分からずじまいだ。
僕はその日、一日中つむぎを待ってみた。二人分の、ああ、でも二人分といっても、一人分のちょっと多いくらいって言った方が正しいかも。つむぎは物は食べるけど、必ず必要って感じでもなかったから。それで、二人分の朝食も昼食も突っぱねて、水と紅茶をそれぞれ二杯ずつ飲んだ。夜はとうとうお腹がすいて夕食を食べたのだけど、量が多くて全部は食べられなかったから、残して食器をドアの外に置いた。使用人には、相変わらず部屋には近づかないよう言っておいた。
寝静まった頃にもつむぎは戻って来なかった。僕には、つむぎの言う「誰か」が見つかったようにはとても思えなくて、かと言って仲間が見つかったとも思えなくて、結局消失か逃亡というのが妥当なように思い至った。空が薄明るく、雲がヴェールのように浮かんでいる。二階の僕の部屋からはそれがよく見える。つむぎもきっとこの景色が好きだと思う。一緒に見たことはないけど、そうだと思った。
僕はまだその「なにか」が宇宙人なのか異邦人なのか地底人なのか、分かりかねている。