護るもの 通常、喫煙所というものは諸々のしがらみから一旦離れてつかの間の休息を得る場所のはずだ。それが何故、じりじりと疲労感が蓄積する時間になっているのだろうか。
「てるづき、お前確か吸わないだろう」
付かず離れずの距離でちらちらとこちらの様子をちらちらと窺っていた、ここ横須賀に配備されてまだ日の浅い新造艦。なにか言伝てでもあるかと待ってみたが違うらしい。手持ち無沙汰な様子からも喫煙が目的でないのは明らかだ。それならそれで缶コーヒーでも買ってきておけば良いのにと思うあたり俺も甘いか。悪意は感じないものの、さすがに落ち着かない。ため息とともに紫煙を吐き出してからようやく声を掛けた。
「吸いませんけど。背中を守るのが俺の役割なので。できたら近くにいさせてください。でも、邪魔だったら追い返してくれて構いません」
淡々と応えながらも幾分不安そうな雰囲気が垣間みえる。あきづき型のコンセプト。それ自体は一応把握しているが性格にここまで反映されているとは思っていなかったのが正直なところだ。こんなことならこんごうにあしらい方を予め聞いておくんだった、と後悔しても遅い。しばらくしたら落ち着くと思いたいものだが。頭痛を感じこめかみを押さえた。
「いるのはいい。ただ、次は何か喋るなり作業するなりしろ。居心地が悪い」
「……はい!」
パッと明るくなった表情につられて自分もほっとする。こういう相手は初めてだか、純粋に慕われるのは悪くない。まぁなんとかなるだろうと長くなった灰を落とし歩き出す。隣には番犬を連れて。