冬海話したいと思ったのは、あなたを理解したいと願ったから。どうしたらあなたの痛みを楽にしてあげられるか、どうしたらあなたがあなたの幸福を許せるようになるのか、それをずっと探し続けている。
吐いた息は白く、空中を漂っている。
空と海面の境界が無くなって、冬の海はどこまでも灰色だ。押し寄せる白波に足をつけるときんと冷たく、足元の砂を波が攫っていった。
ぱしゃぱしゃと戯れに足で海水をかき混ぜれば、冷えた大気に潮の香りが混ざって鼻の奥をツンと突き刺す。
プランクトンが少ないのだろう。海の水は澄み切って、それでいて凍てつくように冷たい。
己の体温が海水に溶けだして、じわじわと身体が冷えていくのがわかる。くしゅん、と思わず漏れ出たくしゃみが遮るもの一つない海に響いて、吹き付ける風と潮騒がすぐにそれをかき消した。
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