Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    K1412621

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 1

    K1412621

    ☆quiet follow

    ⚠️未完です
    大昔、私がまだ逆も見てた頃の作品。
    途中から急に書けなくなり、自分で自分の地雷を踏み抜いたことに後で気付いた(笑)

    #快新
    fastNew

    恋の快新劇(仮) 「──続いてのニュースです。怪盗キッドがまたしても犯行に及びました。昨夜八時頃、鈴木大博物館より鈴木次郎吉氏が所有する世界最大のムーンストーン、月の瞳が盗まれたとのことです。警察の厳重な警備態勢にも関わらず、怪盗キッドは予告通りに宝石を盗み去りました。尚、盗まれた品は月の瞳一点のみとなっており、警察はキッド逮捕と宝石の捜索に全力を尽くしている模様です」



     「……怪盗キッド」

    とある邸宅のダイニングにて、青年はコーヒー片手に新聞を読んでいる最中だった。今朝のワイドショーでアナウンサーがどことなく嬉々として読み上げるニュースに、青年、工藤新一は意識を向ける。

    ──初めて会ったのは確か杯戸シティホテルの屋上だ。あの時はまだ江戸川コナンだった。

    あれから一年。黒の組織は完全には壊滅出来ていないものの、公安警察やFBIによる力戦奮闘のお陰で、十分弱体化させることは出来た。
    それに伴い、APTX4869の解毒剤も見事入手出来た。工藤新一として普通に生活していても問題ないだろうと判断され、灰原、もとい宮野の尽力のお陰でこうして元の身体に戻ることが出来た。
    そう、俺は元の生活に戻れているんだ。

    怪盗キッドが、何か目的があって盗みをしていることは知っていた。次いでに言うとキザでハートフルな上に人の命は絶対に盗らないことも。泥棒ではあっても悪人ではないのだ。
    コナンの時に何度か助けられたこともあった。勿論俺が助けたことも。……別に助けたくはなかったが。
    だから俺が奴のことを調べるのだって、あいつを助けたいとか心配とかじゃなくて、借りっぱなしは嫌だってだけだ。


     新一はそう自分に言い聞かせながら、コーヒーを飲み干し席を立つと、軽やかな足取りで書斎へと向かった。



     ◇



     「新一?居るんでしょー?」

    玄関から響く声に、彼はハッと時計を見た。
    午前十一時。朝のニュースを見ていたのが八時頃だったので、優に三時間は経っていることに気が付いた。

    ──やっべぇ!蘭と約束してたんだった!

    新一は、幼馴染みで彼女の毛利蘭と遊園地に行く約束をしていたのをすっかり忘れて事件ファイルを読み更けっていたのだ。

    「悪ぃ蘭!直ぐ行く!」

    部屋の奥から聞こえる新一の慌てた声。パタパタと忙しない足音が聞こえる。待ち合わせを彼の自宅にしといて正解だった。幼馴染みからの長年の勘だと、蘭は考える。

    「……もう、何かに夢中になるとすぐそうなんだから」

    彼女が一人漏らした呟きは、残念ながら誰の耳にも届くことはなかった。



     ◇



     春休みということもあり、行楽地はどこも賑わっていた。適当に選んだ遊園地だったが、やはりどのアトラクションも順番待ちの状態だ。

    「ねえ新一、次はあれなんてどう?」

    「え?あ、あぁ。そうだな!」

    「ちょっと新一、聞いてるー?」

    ジェットコースターを指差しながら、こちらを振り返る彼女。どうやら心ここに有らずというのがバレてしまったらしく、プンスカ怒りだす蘭に注意され、平謝りする新一。だが、先ほどまで読んでいたFILE1412の怪盗キッドのことが気になるのも、また事実。
    だけど今は彼女とのデートを楽しもうと、気を取り直した矢先だった。

    「そういえばこのジェットコースターって、何年か前にマジックショーで使われたんだって。でもマジックは失敗しちゃって、その時のマジシャン亡くなっちゃったみたい……」

    ──え?

    隣に並んでる蘭が思いもよらないことを口にした。

    「それっていつだ?」

    「えっと、確か、九年くらい前かな」

    ──あれから一年経ってっから、当時怪盗キッドが消失したと噂されていた八年前と一致する!

    「サンキュー、蘭!お前のお陰で奴の尻尾を掴む手掛かりを見付けたぜ!」

    「そうと分かりゃ、こうしちゃいられねぇ!」

    「え?ちょっと新一!?」

    キョトンとする蘭を他所に、この埋め合わせは必ずするから!と、人混みの中走り去って行く新一。だんだんと見えなくなる背中にデジャヴを感じた彼女は、気のせいだとは思えなかった。

    「……バカ」

    不意に発せられた小さな不満は、誰に伝わる訳でもなく喧騒の中へと散った。その時どんな表情をしていたのか、それは彼女自身も知り得ることはなかった。



     ◇



     「バ快斗!!!」

    一方その頃、別の少女もまた、幼馴染みの青年に頭を悩ませていた。

    「うっせぇな、あんだよアホ子!」

    暴言に暴言で返す青年、黒羽快斗は、幼馴染みである中森青子とは家が隣通しで幼少期より色々世話になっている。
    が、だからといってベランダ越しに開口一番暴言を吐かれる筋合いはないのだが。

    「今日こそは絶対青子の用事に付き合ってもらうんだからね!」

    「ケッ!オメーみてぇなお子ちゃまと違って俺は忙しいんだよ!」

    売り言葉に買い言葉。シッシッと幼馴染みを手で払いながら、青年は隣人宅から喚いてくる少女に背を向ける。
    だいたい、買い物ならクラスの女友達と行った方が楽しいだろうに。
    そんな免罪符を考えつつ、快斗は先ほどまで作業していたパソコンに向かう。


     「さてと」

    例の名探偵がここ最近元の姿に戻ったらしい。テロ組織と警察による銃撃戦のニュースは少し前に耳にしていたので、恐らくその際に元に戻る薬でも入手出来たんだろう。

    そこまで考えたところで、唐突に快斗のスマホが鳴った。
    表示された名前を見て少し嫌な予感がするが、取らない訳にはいかない。

    「もしもし」

    『もしもし、快斗ぼっちゃま?昨晩もお疲れ様でした。何事もなく無事に帰宅なされたようで、安心致しました。……それはそうと、実は盗一様のことを嗅ぎ回っている人物がおられるようなのです』

    「親父を?」

    『えぇ。客の一人が、盗一様について聞かれたようなのです。不信に思い直ぐに伝えてくれたのですが、どうもあの事故のことを調べ直しているらしく、その人物というのが……』

    「工藤新一」

    電話の相手を遮って、好敵手の名を口にする快斗。

    『そうです!例の探偵が、こちらのことを色々と調べているようでして…』

    ──やっぱりな。なーんか嫌な予感はしてたんだよなぁ。

    「サンキュー、寺井ちゃん。あぁ。こっちでも何か対策しとくよ。……心配すんなって!じゃ、また何かあったらよろしく!」

    電話を切り、深く深呼吸して椅子の背もたれに上半身を預ける。

    ──さて、どうすっかな。

    くるりと向きを変え、黒羽盗一のポスターが飾られた回転扉と暫くにらめっこする快斗。
    そこでふと、以前自分が彼の名探偵に言ったセリフを思い出した。

    ──握った拳の中にまるで何かがあるように思わせるのがマジシャンで、その拳を開く前に中身を言い当てるのが探偵……か。

    まさしく今の状況にも言えることだなと、快斗は思わず納得してしまう。だったら手の内は見せずとも、握った拳を開き、そこには謎なんてないんだと思わせてしまえばいい。下手に嗅ぎ回られるよりかはマシだと、彼は判断する。

    ──まぁでも、パンドラの箱の中身なんて分かんねぇ方がいい、とも言ったんだけどな……。

    かつて言った忠告を全く無視してこちらに首を突っ込んでくる好敵手に、半ば呆れる快斗でもあったのだが。



     ◇



     「黒羽盗一には一人息子が居たのか。名前は……、黒羽快斗。歳は、俺とタメじゃねーか」

    明くる日の夕方。そろそろ日が沈む頃、新一は最寄りの図書館で当時の新聞を読み漁っていた。

    ──でもこれだけじゃあくまで憶測だ。何か、もっと決定的な……

    次の資料に手を伸ばそうとしたところでタイムアップ。彼の努力を嘲笑うかのように、図書館には蛍の光が鳴り始めてしまった。



     ◇



     尾行されている。
    新一がそう感じたのは、閉館時間を過ぎた図書館から出て直ぐのことだった。

    ──誰だ……?そもそも何の目的で。まさか黒の組織がまた俺の命を!?

    様々な推測から最悪を導きだしたところで、不意に真正面から声をかけられた。

    「なぁ、あんた顔色悪いけど大丈夫か?」

    突然の声に驚き慌てて視線を上げると、そこには自分と同い年くらいの青年が心配そうにこちらを覗き込んでいた。

    「あ、あぁ……」

    適当に応え、周囲を警戒する新一。だがそこにはもう、彼を尾行する人物の気配は全くなかった。

    「悪ぃな、大丈夫だ」

    新一はそう言うと、声をかけてきた青年を観察する。黒のジーンズに黒のパーカー。おまけに黒のキャップをやや深めに被っていた。
    そこまでは良かった。
    問題は、どことなく顔つきが自分に似ている気がしたのだ。

    ──いや、まさか……。

    ふと新一の脳内に浮かんだのは、ずっと追い続けているあの白い怪盗。何故だか目の前の青年と彼が重なって見えてしまい、このままサヨナラしてはいけない気がしてきた。
    新一はどうにか彼を引き留められないかと悩んでいると、青年の方からその口実が与えられた。

    「いや、やっぱあんた顔色悪そうだぜ?近くの喫茶店とかで休んだらどうだ。俺も着いてってやるからよ」

    「……あぁ。そうするよ」

    かくして、彼等は近くの喫茶店に向かうことになったのだが、その状況をほくそ笑んだのは新一だけではなかったことに、彼はまだ気付かなかった。



     ◇



     「で、お前誰だ?」

    「あぁ、自己紹介がまだだったな。俺は黒羽快斗ってんだ!ヨロシクな」

    「っ!?」

    ──黒羽……快斗だと!?

    直前まで散々調べていた人物の名を名乗られて、新一は勢い余って椅子から立ち上がりそうになった。

    確かにさっき出会った時から、いや、出会う前から妙な違和感があった。
    図書館からの尾行の気配。自分とよく似た声と顔、背格好すらも。黒羽という名字に、更にはこのタイミング。
    状況証拠を洗い出しそこまで推理すれば、自ずと目の前の青年がある人物と結び付く。自分がずっと追っていた好敵手。月下の奇術師、怪盗キッド。
    やはり最初の直感は間違っていなかったのだと、新一は内心笑みを浮かべる。

    だが、まだ憶測に過ぎない。この青年が怪盗キッドだという証拠は、どこにもないのだ。

    「なぁ、あんたが一番欲しがってるものを見せてやろうか?」

    突として発せられたその言葉に、新一は目の前の青年に意識を集中させる。

    「上着の右ポケット見てみろよ」

    神経を尖らせたまま目線は相手から外さずに、自分の上着のポケットに手を突っ込む新一。

    指先に、ヒヤリと冷たく、ツルツルとした、丁度こぶし程の大きさのものが触れた。

    「っ!!!」

    触れた瞬間、分かった。
    それでも、相手に向ける意識はそのままに、握ったものをゆっくりとポケットから出し、恐る恐る拳を開くと──

    ──っ!やっぱり、コイツっ!!!

    「キッ──!」

    言いかけて、目の前の青年が動きを見せた。軽やかに、音もなく。人差し指を口に添えて、にっと笑いながら小声で「シーっ」と言ってるのが見えた。その一連の動作があまりにも華麗で一切の無駄のない動きだった。


    「……お前、どういうつもりだ」

    自身の手の中でキラキラと輝く宝石。まさに、先日盗まれたムーンストーン、月の瞳を眺めながら、新一は声を潜めてキッドとの会話を試みる。

    「名探偵こそ、どういうつもりなんだ?」

    ──っ!やはり、俺が調べ回ってたのを分かって接触してきたか……

    「黒羽盗一の付き人をしていた男が経営するプールバー周辺で、お前が聴き込み調査をしていたことは分かってんだぜ?」

    「俺たちは怪盗と探偵。俺が謎を残してお前がそれを解き明かす。今までもそうだっただろ?名探偵がこっち側に踏み込む必要なんて無いんだぜ?」

    「俺はただ…っ」


    「お待たせいたしました、お冷でございます!」

    反論する新一を遮るタイミングで、店員が水を持ってくる。

    「ご注文がお決まりになりましたら、ボタンにてお知らせくださいませ」

    快斗は、ありがとうございます!と愛想よく返答すると、店員が持ってきた水を、新一と自分にそれぞれ配る。


    「で?何だよ」

    次は、快斗が新一に訊ねる。
    口ごもりながらも言葉を紡ぐ新一。

    「……俺は、色んな人の力を借りて今の俺がいる。そこには、お前も入ってる。……だから借りを返すのに、お前の探し物とやらにちょっとは付き合ってやってもいいって思っただけだ……。それに、お前にだってキッドじゃない、お前自身の生活がある筈だ。俺は元に戻れてるのに、お前はまだ怪盗を続けてるってのが気に食わないだけだ…っ!」

    何ともまあ強引な。だけど、あの名探偵が赤面しながらそこまで言ってくれるとは。驚きはしたがポーカーフェイスで隠しつつ、フッと小さく微笑む快斗。
    笑うなよ、と文句を良いながら、新一は熱くなった身体を冷まそうとコップの水を一気に飲む。

    「笑ってなんかねぇよ。けど、名探偵が俺のことそんな風に想ってくれてたなんてな」

    「か、勘違いしてんじゃねぇ!何なら、今からお前の正体警察にバラしてもいいんだぞ!」

    「落ち着けよ。まぁ、名探偵の言い分は分かったけどよ、探偵であるお前に、怪盗の手伝いをさせる訳にはいかねぇよ」

    からかわれたかと思えば正論を返されて、ぐうの音も出ない。

    「まぁでも、名探偵にちょっと協力を頼みたいとも思ってたんだ」

    「本当か!?」

    助力を求められたのが嬉しくなり、新一は目をキラキラさせながらとっさに立ち上がる。

    次の瞬間────

    ガタン!
    急に視界が歪み、朦朧とする意識。立っていられなくなり思わずテーブルに手を付く。猛烈な眠気に襲われ、瞼が重力に逆らえなくなる。

    ──な……んだ、これ…………。

    「そうそう。名探偵にはこれから協力して貰うんだから、それまではゆっくり休んでなよ」

    「キッ……ド…………」

    意識を手離す寸前、今しがた飲んだコップの水が視界に入る。あぁ……と理解するのと同時に、新一は気を失いそのまま椅子に崩れ落ちてしまった。
    目の前でポーカーフェイスをしていた青年が、ニヤリとほくそ笑むのを、彼は見ることはなかった。



     ◇



     新一が目覚めると、そこはベッドの上だった。辺りを見回すとどこかのホテルのようだ。起き上がろうとするが、自分の手足はしっかりとベッドに縛られている。

    「お目覚めかい?名探偵」

    「……キッド!お前、何考えてやがる?!」

    「何と言われましても……」
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works