幸せの在処 初めて銃を持ったのは15歳のときだった。中学校を卒業したばかりの、桜舞い散る3月のこと。
「…本当にいいのかね」
「はい」
傍らに立つ史彦が静かに問い掛けてくる。その声に引き留めるような色が滲んでいることに気付いていながら見て見ぬふりをする。
「もう決めたことですから」
手にした漆黒の塊は、とても冷たく感じた。
あれから4度季節が巡り、秋も深まってきたある日のこと。喫茶楽園のボックス席で紅茶を飲みながら、遠見真矢は目の前で繰り広げられるお祭り騒ぎを見守っていた。
「翔子! もっと左!」
「これくらい?」
「あーいきすぎ! 少し戻して!」
「ええと…こう?」
「そう!」
大きめの黄色いペーパーフラワーを壁につけた翔子と、位置を指示していた操が嬉しそうにハイタッチする。操の勢いが強すぎてよろけた翔子を見て思わず立ち上がりかけたが、傍に待機していた甲洋が抱き留める方が早かった。
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