貴方へ、一〇一の薔薇を とある休日の午後。藤丸立香と蘆屋道満、奇妙な縁で寝食を共にしている二人は、同じ部屋にいながら互いに押し黙って、それぞれ別のことをしていた。厳密に言えば押し黙っているのは道満の方だけで、先程からずっとスマートフォンの画面に釘付けになっている立香はへえ、とかふーん、とか度々独り言を呟いており、道満からすればどうやらそれが耳障りに感じるらしかった。
「立香」
「何、蘆屋さん?」
「独り言が多すぎるのでは?」
「えっ、ごめん……ていうかオレ、そんなにうるさかった?」
一体何を見ていたのかは知らないが、いやそもそも道満にはどうでもいいことなのだが、あれほど頻繁に驚きやら感心やらを声に出していながら、全て無自覚だったとは!
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