牛乳を買う男 時々このスーパーに、背の高いイケメンが買い物をしにやってくる。あまりに顔が良いから、パートからアルバイトまで皆がその人を認識している。
買い物に来る頻度は少ない。愛想も良いわけではない。それでなくても普通はお客さんの顔なんて覚えられない。けれど、一度見たらあの人を忘れる従業員なんていないだろう。
ーー店に入ると即座にいつも、牛乳を一本だけ掴んでレジに来る。
通称「牛乳を買う男」。彼はこのスーパーの有名人だ。
夕方になるとそこそこ客が多い。夕飯の材料やお惣菜を買う人でいっぱいになる。レジ打ちの人の波がどうにか一旦切れて、一息つきながら外を見ると雪まで降りはじめている。あぁ帰りには積もっているかもしれないなぁと憂鬱になる。
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