2022.03.30
「あなたも器をきれいにしてくれるんだよね」
スーツのまま降り立った少年は、初出撃を終えたばかりというのに息ひとつ乱れていなかった。モニター越しに眺めた踊るような活躍は彼にとっては苦でもないものだったらしい。
じっとこちらを見つめる瞳は透明だった。まばたきひとつなく注がれる視線は痛い。ただ声を掛けられただけだ。彼は私達の敵じゃあない。理解はしているが、少し身震いがした。勘付かれないよう、震え続ける手のひらを押さえ付ける。
「ほとんど、雑務ですけどね。実際関わっているのは向こうのお三方です」
目ざとく見つけられたけれど、私の担当はブルクの片隅だ。中枢を担う方々を煩わせるまでもないような細々した業務を巻き取ったり、まとめ直して報告に上げたりという、ファフナーに関わっていると名乗りを上げるのがおこがましいほどの接点だ。
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