闇を打ち払って ホテルに戻ってきた勇利は、まるで世界の破滅を目撃してきたかのように、憔悴しきっていた。暗い表情に血の気はなく、いつもくるくると動いている、俺の大好きな瞳は光を失い、どこを見ているのか判らない。もしかしかすると、何も映してはいないのかもしれない。
常に美しい姿勢で、きびきびと動く彼は消え失せ、肩を落とし、ぼんやりドアの向こうに佇んでいる。この様子で、よく戻ってこれたものだ。こんな風になるのなら、たとえ騒ぎが起きても、葬儀場までついて行けばよかった。己の失策に、ギリと歯ぎしりをひとつ。
でも、どんな状態であろうとも、無事に帰り着いたことに安堵し、俺は彼の背に手を添え、入室を促した。
そうだ。長谷津でヒロコに教えて貰った。葬儀から戻ったときは、部屋に入る前に塩で身を清めるのだと。
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