泪の理由(ワケ)を泪は弱さの象徴だ。
我はそう確信している。
あ奴らはその弱さゆえに悲しみ、嘆き、怒り、絶望し、泪するのだ。
故に我は泣かぬ。そのようなものはとうに忘れた。
我は泪を知らぬ。そのようなものは理解する必要もない。
そのようなものは、強き者には無縁だ。
他人の傷など、他人の苦しみなど、知ったことではない。
奴は、我が視るいかなる時も泪しなかった。
我にその腕を痛めつけられてもなお、主君の真実を知ってもなお、我の業を見てもなお、過去の災を知ってもなお。
その眼に泪が光ることはなかった。
我は確信した。奴は強きものだと。
故に我はあの男を認めた。
我は泪の理由を、知らない。
「……勝者が泣くな」
「…………」
仰向けに転がる我に、覆いかぶさる金色の髪。
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