さよならインプリンティング(凪玲) 揺れる車両の中、見つけたピースをぽっかり空いたパズルの真ん中にぱちりと嵌めてみる。
「俺は……。あの時みたいに、玲王と普通に喋って、笑って、そんな風に戻れたら、なんて」
時計の針は、巻き戻せない。
けど、俺達の関係は……まだ巻き戻せるかも。なんて、淡い期待。
手を伸ばしてもギリギリで届かない、そんな歯痒い距離は嫌だ。振り向けばそこに玲王が居て、手を伸ばせば捕まえることができる。そんな距離に居て欲しい。
繋ぎたくて伸ばした俺の手は、呆気なく玲王に捕まれてしまう。眉間に皺が寄って……怒ってる?
「過去は過去。今を……前を見ろよ、凪」
「……え?」
「俺の言った事、忘れんな。ばーか」
俺の手を離し、玲王は座席から立ち上がって駅のホームに降りてしまう。えっ、玲王の乗り換えの駅ここじゃない。降りるの、俺の方!
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