二幕:美しきサルビア 西暦二〇九五年、四月三日。東京・八王子。
式典というものは、大抵暇で退屈なものである。
特別な機会に行われ、大抵は多数の芸術的な要素から成る趣意を持った、一連の儀式的な催しである。改まっていると言えば聞こえはいいだろうが、結局のところ形式にとらわれた窮屈なものという訳である。
本来ならば出席しなくてもよいこの式典を、わざわざ達也が参加している理由は、新入生総代の挨拶を聞くため、これだけであった。
本年度の新入生総代は、男女ともに魅了する並はずれて可憐で神秘的な美貌を持ち、ぴんと背筋を伸ばして生徒会役員の隣に座っている女生徒。背の半ばまである艶やかなストレートの黒髪の隙間から覗く黒く澄んだ瞳をこちらに向け、いたずらっ子のように緩めた。
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