#6 先ほど聞いた話だが、美月がどうやら嫌な視線を感じ取ったらしい。ストーカーの類かと尋ねれば、個人を狙ったものではないと彼女は答えた。
つまり、狙いは複数人、あるいは教師。または当校の何か。
時期が時期だけに、見逃せない不信感であった。
またそれに拍車をかけるように、幹比古も同じようなことを口にしていた。式を打っている、と。式とはつまるところ式神のような類。スピリチュアル的な存在。幹比古が扱う術式とは違うらしく、捕まえられないのだとぼやいていた。
おそらく、この国の術式ではないのだろう。
「だが、貴方はおそらく違うのだろう」
達也は急に立ち止まり、その反動で後ろへとこけた。後ろを付けていた男ははっとした表情を浮かべて身を乗り出した。甘いな、と達也は思った。が、好機であることには違いなかった。
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