「一回だけ。そう、一回だけ俺は貴方を許します」
そう告げたのは、あと数時間後まで恋人でいられる俺の愛しい人、だ。
奇妙な関係であると言えばそうだが、俺たちはそれを納得した上でこの付き合いを続けていた。愛し合っていないわけではない。ただお互いに、手を取れない事情を抱えているがゆえに、こうなってしまったのだ。
俺の愛しい人は特殊な体をしている。それは幼少期に受けた魔法事故-魔法実験による後遺症であり、奇跡ともいえるものであった。
物を分解し、再構成する能力を生まれ持った彼に相応しいと言えばそうなのだが、それを持つがゆえに、遠い存在となってしまっているのも、また違いなかった。
俺の愛しい人は男であるが、妊娠できる体であった。
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