無機質な足音が白い廊下に響く。金髪の少年は、重い足取りで今日も病室を訪れる。手には野花を摘んできたような花束。野に出ることは難しいであろう女への、せめてもの慰めであった。
その女は美しかった。どことなく異国を感じさせるエキゾチックな顔立ち。濃く長いまつ毛に彩られたふたつの柘榴石。白くなめらかな肌。濡羽色の艶やかな黒髪。美しいカーブを描く唇。薔薇色を帯びた頬。彫刻のように通った鼻筋――。
それらを少年は作り直そうとした。ガラティアの子孫(アドニス)のような美少年は、何度も挑んだ。何度も。何度も! だが無駄だった。
まるでその姿こそ本来の姿だとでも言うように。
白い肌は焼け爛れたように赤く、引き攣れて。
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