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    hariyama_jigoku

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    hariyama_jigoku

    DONE土斎小説。習作。「心臓の在処を問う」.

     血の臭いが、火薬の臭いが、そこら中に立ち込めていた。視線の先にはよく知った顔が、へらりと表情を崩す。
     これは夢だ。唇を噛み切るほどに強く歯を立てるが、痛みばかりで白い天井は影も形も現れはしない。
    「ねえ、土方さん」
     投げ掛けられた言葉は、自分が受け取るべきものではないはずだ。屍は屍らしく、生者の道行を見ていればいい。罷り間違っても、こんなものを望んではいけない。男はそれを知っている。生前のやり直しなど、死への暇の夢になど見るべきものではないのだ。
    「ずっと俺ぁ、あんたに殺して欲しかった」
     覚えのある景色、顔、声。そう、その日も酷く風のすさぶ日であった。だが、目の前の影が宣う言葉だけが、記憶と違っている。
     ただの亡霊だ。目線は外さないまま、刀に手を掛ける。殺気を込めて陽炎を見据えるが、臆する様子も見せない。
    「その気になってくれました?」
    「そんなんじゃねえ」
     軽口と変わらぬ声色で、陽炎は問うてきた。それに対して、ぴしゃりと切り捨てる。一瞬だけその軽薄さを装った表情が揺らぎ、怯えが混ざった。だが陽炎は窮屈そうに眉を顰めて、一歩踏み出した。
    「冷たいなあ」
     また一歩。じ 2288