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    hariyama_jigoku

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    hariyama_jigoku

    DONEユスバザ小説。習作、糖度高め。「噛み潰したそれは甘い」.

     ほの温かい指先が、包帯越しに頬に触れた。ユーステスの細い褐色は、勿体ぶったように包帯に爪を引っ掛けて綻ばせようとする。到底、バザラガ相手にするようなことではない、と胡乱な目でユーステスを見つめた。
     当の本人は意に介した様子もなく、笑みこそ浮かべないもののベッドの縁に腰掛たまま随分と緩んだ表情を晒している。その頬は酔いによって些か朱を帯びており、酒気も強く香っていた。取っつきにくいだの気難しそうだのと称される冷然とした雰囲気は、今や影も形もない。あくまで短くない時を過ごしてきた同僚としての贔屓目かもしれないが、ゼタやベアトリクスが見ても同様の感想を抱くだろう。
    「―――っ」
     思索に耽っていると、不意に急所である首を撫ぜられた。反射で身じろぐと、その分だけユーステスが距離を詰める。透き通った氷のような瞳が、バザラガを注視している。
     筋張った首を辿って、喉仏をくすぐるように爪が触れた。不快感は感じない、その程度の力加減。顎を掻くように指が滑る。注がれる視線の甘さ、まるでユーステスの好む犬を可愛がるような仕草に、次第にバザラガの方が耐えられなくなってきた。
    「俺は、犬じゃないが」 1597

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    PROGRESSカトシス小説。再掲。「貪愛1」.

     泥のように、全身に疲労が重く圧し掛かっている。騎空挺のタラップを上がる足が、鉛にすら感じられて仕方がない。誰かにすれ違う度に労いの言葉をかけられ、なんとか愛想を絞り出した。表情筋がみしみしと音を立てている、そんな幻聴まで聞こえてくる。だが、あと少しだ。ここ最近出ずっぱりだった任務がようやく終わり、しばらくはゆっくりと休めるだろう。
     体を引きずるようにして訪れたのは、自室ではない。目的の部屋に辿り着き、ドアを三度軽く叩いた。
    「はーい」
     入室の許可を得ると、ドアノブを回して部屋に入る。
    「失礼します、団長さん。ちょっと、今大丈夫ですか?」
     カトルが声をかけると、団長が机に落としていた視線を上げた。珍しく、苦手だと言っていた書類仕事に向き合っていたようだ。かつん、とペンを机に置く、小気味よい音が鳴る。
    「任務帰り? お疲れ様、報告はまた後日って言ってなかったっけ?」
     確かにそういう手筈にはなっていた、が少々事情が変わったのだ。不思議そうに、団長が少し首を傾げる。
    「ええ。ですがちょっと数日だけ、休暇を貰いたくって。その打診ついでに報告も済ませてしまおうかと」
     そう思って出 5886

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    DONEカトシス。再掲。「合縁奇縁」.

    「ねえ、大丈夫? 飲み過ぎじゃない?」
     うぅ、と常ならば出さないような唸り声が、カウンターに突っ伏す下から聞こえた。これまた珍しい。つい苦笑して、シエテは視線をシスの方に向けた。
    「どうしちゃったのカトルくん」
     完全に潰れている様子のカトルと比べて、まだ素面そうな―――そもそも仮面越しだから今の顔色は分からない―――シスに問いかける。
    「飲み比べをしていた」
     さらりとそう言ったシスがまた、酒精の強そうな酒を口に含んだ。からんと鳴る氷の音でも聞こえたか、カトルの耳が揺れてぐらりと危なげに上体を起こす。
    「まだ、のめます」
    「ちょ、ちょっとストップストップ!」
     胡乱な声で手元のグラスに手を伸ばそうとするカトルを、慌てて制止した。
    「それ以上はちょーっと危ないんじゃないかな?」
     不機嫌そうに歪められた目が、じとりとこちらを睨む。酔ってるからって殺気を飛ばさないでほしいと、温度の低い視線から逃れるようにテーブル席の方に座っているカトルの片割れにちらりと視線を送った。
    「そ、その。私も楽しくなってしまって」
     感情の滲まない表情の代わりに、耳がぱたぱたと揺れる。申し訳なさそうに視 2824

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    DONEカトシス。再掲。「伝熱」.

    「シスさん」
     呼ばれた名前に従って、ふいと視線をそちらに向ける。月明かりが合間合間に差す、騎空船内の薄暗い廊下にぽつりとカトルが立っていた。
    「任務帰りか」
     そう問いかけると、振動が伝って手持ちのカンテラが揺れる。団員の殆どが寝静まった夜に、シスが持ち回りの巡回を行うのが丁度今日だった。
    「ええ、少し遅くなってしまいましたが概ね予定通りです」
     こくりとカトルは首肯して、じっと影を被った瞳がこちらを見つめる。首を僅かに傾げると、カトルがふっと吐息みたいな甘さをこぼした。そしてゆっくりとシスの方に手が伸びる。驚いて若干体が跳ねるが、すぐに意図に気付きため息をついた。カトルの口角がにやと上がるのも、いいように扱われているようで落ち着かない。
     うなじを細い指が這い、後頭部を掴むように引き寄せられる。視線が急かすので、空いている手で口元を晒すように仮面を押し上げた。屈むように少し身を倒すと、かりと地肌を爪先で掻かれる。
    「誰かに見つかったらどうするつ、ん、むっ」
     半眼で口にすると、塞ぐように口づけられた。下唇に歯を立てられ、舌が潜り込む。水音が跳ねて背筋がぞくりと震えた。舌先を擦 1875