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    hariyama_jigoku

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    hariyama_jigoku

    DONEウァプドラ小説。習作。「メランコリーを食んだ」.

     長い廊下に、寝言とも酔っ払いの戯言ともつかない声が落ちる。どちらにしろ、その男に肩を貸して半ば引きずるように歩くウァプラには何を言っているのかの判別はつかなかった。どうにか目的の部屋に辿り着き、乱暴にドアを開けてアンドラスを押し込む。
     勝手知ったる、という程ではないが見慣れたアンドラスの私室を睥睨して、寝台にでも放り投げておくのが正解かと重い体を抱え直す。
    「ウァプ、ラ……?」
     久しぶりに耳に届いた意味の通った単語に、つい足を止めた。衝撃で起きたなら丁度いいと、下がった頭を睨みつける。
    「起きたんなら、さっさと自分で立ちやがれ」
    「はは、酷いなあ」
     肩にかけていた腕を下ろすと、足元は多少危なっかしいもののどうにかアンドラスは自力で立ち上がった。これでお役御免だと、ウァプラは踵を返す。
     そもそも、酔っ払いに絡まれたのか珍しく酒気を漂わせてテーブルに寝ていたアンドラスを、通りがかったからという理由で押し付けられたのが事の発端だ。ソロモン曰く、最近よく行動を共にしているのを見たというのが理由らしいが、一方的にアンドラスが関わってくるというのが正しい。それを仲良しだなんだの括り 2246

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    DONEグラデカ小説。一発書き。グに庇われて不貞腐れるデ。.

     ゆらりと、琥珀色の光が床を這った。睡眠の妨げになるだろうと、強い灯りは避けられて蝋燭のか細い火ばかりが部屋を照らしている。その微かな光が、琥珀の漂うグラスを反射して水面がさらさらと揺蕩った。
     グラシャラボラスのしまい込んでいた酒を勝手に引っ張り出して、デカラビアはグラスを揺らす。ずっと、斜めに機嫌を傾けているが八つ当たりのような真似をしても溜飲は下がらない。
     他のメギドならともかく、グラシャラボラスがデカラビアを庇う価値などなかったと知らしめてやるためだ。だが利用するためならいざ知らず、なんの目的もなく他人の思考回路など知るべきではなかった。こんこんと眠る男が目を覚ましたとて、多少のことなら気にしないとされるのが脳裏に浮かぶ。
    忌々しい。
     蒸留酒の味は、余生の友と呼ぶには些か酒精が強過ぎる。穏やかに揺らぐ視界は捨て置いて、椅子から寝台へと少し身を乗り出した。いつもならうるさいぐらいに感情を乗せている顔は、ただ凪のあるばかりである。
     地に足のついていないような、己の指先に不安を感じて机に中身の入ったグラスを置いた。のし掛かるような眠気が、頭に纏わりついている。覗き込んだグ 643

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    DONEグラデカ小説。「軽口の応酬にもならない」付き合ってない。.

     アジトの大部屋の一つは、閑散としていた。冬の寒さからか、部屋の隅々までは熱は行き渡らないためかそれぞれ自室に引っ込んでいるのかもしれないし、そろそろ夕食の時間も近くなってきたからその準備に追われているのかもしれない。
     グラシャラボラスはうつらうつらとそんなことを考えながら、磨き上げた鉄塊に目を細めた。引き受けていた仕事は降り続く大雪で馬車は通れずに延期となっている。しばらくアジトに身を寄せ、折角籠るのだからと手に馴染んだ武器の手入れと洒落込んでいるのだ。
     成果は上々で、鉄球の棘の先まで輝いているように見える。キャラバンの護衛中に幻獣と相対した時に、都度都度派手な汚れは落としていたものの細かいところまでは手が回っていなかった。一息ついて、テーブルに得物を置く。人がいないからとソファとテーブルの一画を占拠していたが、もう少し時間が経てばここも騒がしくなるだろう。今の内に片付けておこうと、慣れない作業に凝り固まった体を伸ばす。
     と、どさりと目の前で音がした。つられて目を見開くと、いつの間に部屋に入ったのかデカラビアがソファの背凭れに身を預けている。いつもの帽子を乱暴に取り払って 1742

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    DONEグラデカ小説。「毒でもいいから頂戴」.

     らしくもなく、若干の緊張に似た感情を伴ってデカラビアは扉の前で息を吐く。忌々しい労役と称したサンタとしての奉仕活動という辱めもとうに終わり、年も明けた。だが、冬の気配は一向に去る様子がない。
     廊下を漂う冷気に馴染んだ手で、少々乱暴に扉を叩く。まだ昼を過ぎて少し経った頃合いだったが、その日は一際寒い日だった。本日の労役として課された幻獣の討伐は、朝から駆り出されたにも関わらず早々に片がついた。帰還の際に、この部屋の主がいると聞いて訪ねてきたのだが姿をちゃんと見たわけではない。無駄足にならなければいいが、と手を擦り合わせた。
    すぐに扉が開かれて、中から少し驚いた様子の顔が覗く。
    「誰かと思ったらデカラビアか、珍しいなお前が用なんて」
     部屋の主であるグラシャラボラスがデカラビアの姿を見とめて、僅かに目を細めた。
    「まあ、中入るか?」
     元よりデカラビアも立ち話で済ませるつもりはなかった。あぁ、と浅く頷くと、中に通される。
    「ついさっき戻ってきたばっかりだからよ。廊下とあんま変わんねー寒さだけど、勘弁な」
     そう言って荷物から投げ寄越されたのは、薄手の毛布だ。余計なお世話だと跳ね 3269

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    DONEグラデカ小説。習作。.

     例の騒動の後、フルカネリは王都預かりの身となりデカラビアもアジトで監視付きの生活を余儀なくされていた。だが、過度に拘束されることはなく、ソロモンの意向で軟禁のような形になっている。
     その動機はどうであれ、行ったことは立派な反逆だ。グラシャラボラスはもう気にしていないものの、普通はそう簡単には切り替えられない。他のメギドが遠巻きにするのもしょうがないのだろう。
     だが、元々仲間内での交流は盛んではなかったデカラビアだ。不自由は苦にすれど、詰めるような言葉にも軽くいなすか黙殺するかのどちらかのようで、意には介してはいないようだった。むしろ、親しげに話しかけられることこそ迷惑そうな節がある。
    「よう、デカラビア。何読んでんだ?」
     そう声をかけた瞬間、デカラビアの眉間に皺が寄りじとりと鋭い視線が向けられた。この顔である。
    護衛の仕事の合間を縫ってアジトに訪れる度、 こうして構っているのだが反応は芳しくない。どうせ一人なのだからと昼食に誘ってみるが、その渋面は相変わらずだ。
    「別に何でもいいだろう」
     素っ気ない返事を他所に、机に積まれた本を覗き込む。暇を持て余したデカラビアが本を読 4172