3日目『お腹いっぱい!』 私の職場であるコスメ売り場には様々なお客様がいらっしゃるが、そのお客様はなかでも特別目を引いた。制服を校則の規定通りに着こなすような勤勉な男の子がひとりでいるというのも珍しかったし、その子の容姿がとても美しかったのもある。
切れ長の目元に泣きぼくろを携えたその男の子は、三十分くらい前にも店の前を見回しながら通過していったはずだ。その視線が何かを探すようにさ迷っているのは、先程みかけたときと変わらない。たまたま手が空いていたこともあって、私はその子に声をかけることにした。
「何かお探しですか?」
「ああ、はい」
店員が近づいて来ているのが見えていたのか、声をかけられたのに対して驚いた様子もみせずに淡々と頷く。
1741