8日目「ひとりぼっちのかいぶつ」 無口なクラスメイト、青柳冬弥とは先月の席替えを機に隣の席になった。一番後ろの窓際に並んだ特等席二つ。それが彰人と冬弥の席だった。暇なときはグラウンドで体育の授業をしているやつらを眺めることもできるし、少し工夫すれば居眠りしたって教卓からは見えづらい。彰人がその席を最高だと判じたのは、それだけではなかった。
隣の席の生徒は、休み時間中いつもひとりで本を読んでいた。テストで好成績を残した者のみ掲示される順位の中では常にトップとして名を残すことで有名だったけれど、それを笠に着た様子もない。それでも、一重に分厚いグラスの眼鏡と口元まで覆うような長い前髪のせいで表情が読めない彼に、積極的に話しかけにいこうとする者はいなかった。本人もそれを気にした様子もなく飄々としていたのが、拍車をかけたのだろう。彰人も、隣の席になってすぐはどう接するか悩んだものだった。
3184