覗き見(仮)窓から差し込む光と小鳥の囀りでヒュンケルはパチリと目を覚ました。
首を巡らせ、隣で眠るひとに目をやる。
「化粧をしていない顔を間近で見られるのは恥ずかしいから」と、眠る前は必ず背中を向けて眠る彼女が、この時間はいつもこちらに向いている。
(愛らしいな…)
長いまつ毛、筋の通った鼻…そして…
紅のひかれていない口元を見るのが特に好きだ。
うっすら開かれた少し乾燥したピンク色の唇。
見慣れた、艶のあるきりとした赤い口紅姿とは異なる無防備な口元。
自分しか知らない彼女の唇。
己が唇を押し付けたい衝動を抑え、これを眺める時間は、なんと贅沢なことか。
彼の独占欲が満たされる瞬間だ。
ふるふると彼女のまつ毛が震えたのを目視した。目覚めの合図だ。
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