杏こは 遠くの方で物音がして意識を引き戻された。目を開けると、天井から射す橙色の照明に眩んだ。
(うわ、サイアク…。電気つけっぱで寝ちゃった…)
電気を無駄にした後悔に下唇を噛んで、私はベッドに仰向けの姿勢のまま部屋を見渡した。
カーテンの隙間から見える窓の向こうは真っ暗。夕方か、もしくは夜か。たしかベッドに横になったのは昼頃だったから、そこそこの時間が経ってそう。おでこに貼った冷えピタも温くなってて、端っこの方が剥がれてる感覚があった。
(…こはね、そろそろ帰ってくるかな…)
枕元に置いたはずのスマホがない。寝てる間に床に落としたのかも。
だけど、わざわざ起き上がって探すほど必要なわけじゃないから、時間を確認するのも諦めた。
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