それは真昼の月に似て 眩いライトが差し込む様を見つめ、朝日みたいで綺麗だ、なんて呑気なことを思った。
「……日和くん」
しゃがみ込んだ凪砂が心配そうに見上げて来る。そんな悲しそうな顔をしないで欲しい。決して君が悪いわけではないのだから。
三日間に渡り開催されるEdenの単独ライブ。満員御礼で迎えた千秋楽も終盤に差し掛かっている。そのタイミングでトラブルが起きた。
凪砂が見つめる先、椅子に座った日和の左足首は熱を持ち始めていた。ステージ後方にセットされている機材の位置がリハーサルのときとずれており、避けるために咄嗟に踏んだステップで捻ってしまったのだ。
「殿下、少し触れますね」
凪砂の横に膝をついた茨は一言断りを入れると手早く保冷剤で患部を冷やし、少ししてからサポーターで簡易的に固定した。そつのない手付きに感心する。最初に捻挫に気づいたのもおそらく茨だった。隣で踊っていたからかは分からないが、曲が終わると同時にアドリブでMCを挟んで日和が舞台袖へはける流れを作ってくれた。茨もだが凪砂もジュンもよく順応したものだ。ジュンに至っては今なおステージに残りひとりで場を繋いでくれている。
2880