恐ろしいこと 無機質な白い部屋。
「おー、まじかこれ」
暢気な声が隣から響く。黙殺。
格子状のタイルで囲まれた部屋。扉一つしかない空間に、奈良坂と当真は立っていた。
「……これが、あのトリガーバグなのか?」
頭痛を堪えながら奈良坂がそう絞り出すように言うと、当真はけらけらと笑う。
「だろうなぁ。トラップの暴発って触れ込みだったが、開発室でふざけて作ったやつなんだってさ」
嫌な補足情報は恐らく当真の隊長からだろう。奈良坂は重いため息を吐き出した。
一週間ほど前だったか、隊員にトリオン体のバグと使用上の注意が勧告された。内容は、トリガー起動時にトリオン体がボーダー内の仮想空間に飛ばされてしまうというものである。
安全上は問題はないが、戦闘用トリガーを使用することができず、破壊も不可。通信も外部からの接触を待つしかなく、トリオン切れを待つのみ、という代物だ。
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