扉が開く音に微睡んでいた意識が現に引き戻される。瞼を開ければ丁度、ファレナが部屋の中へと足を踏み入れた所だった。かつてこの城が建てられた時、有事に王族が潜む部屋の一つとして造られた窓一つ無い、暗い部屋。人工的な薄明りに照らされて色濃い影を落とす巨躯が近付いて来るのをただ眺める。どうせ、することは何一つ変わらない。今まで幾度となく繰り返され、そしてこれから先も死ぬまで終わらないのだろう不毛な営み。
この狭い部屋に閉じ込められた当初はレオナも逃れようとした。ファレナを殺してでも、もしくは自分を殺してでも自由を求めた。けれどその度に一つしかない扉にかけられる魔法の数が増え、レオナ自身にかけられる呪いが増えた。
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