誰かのための君のまま「先生、ただいま戻りました!」
「おかえりなさいセイジ」
鍵を持たせているのにセイジは律儀にベルを鳴らして、ロビンが迎えるまで待つ。息を切らして、如何にも急いで走ってきたという様子の子供が扉の前に立っていて、ロビンはいつも思わず笑ってしまうのだ。
「そんなに慌てて来ずとも、家も僕も逃げませんよ」
ロビンがそう言って招き入れれば、セイジは玄関先で靴底の汚れを落としながらもごもごとした。
「……先生は、僕と早く会いたくなかったですか?」
自分だけ必死みたいで恥ずかしいです、とセイジがむくれるのが可愛くて、ロビンは膨らんだ頬を指でむにとしぼませながら、僕も会いたかったですよと微笑んで見せた。
毎時毎秒会いたいに決まっている。彼のためにならないので我慢しているだけで、ロビンの人生にセイジは必要不可欠なのだから。重いので、伝えずに秘めておくけれども。
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