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    みつみ|なつき

    @mitsumine_333

    一次創作の表に出せない話とか

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    みつみ|なつき

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    ネタ出しメモから、ラディムの眼帯にキスするミカル
    (相互さんも提供してくださったネタです、感謝…!🙏)

    #創作BL小説
    creativeBlNovels
    #創作BL
    creationOfBl
    ##王子は雇われ傭兵に見られたい

    おかえりを言うために「ミカ、悪いんだけど、ちいとばかし故郷に帰らなきゃならなくなっちまった」
    「休暇か? いつ頃出発するんだ?」
    「これから。別に荷物とかはねぇから、このまま帰るつもりだ。二日で戻る」
     日の出と共にラディムに起こされ、話があると言われて身構えていたため少々気が抜けた。休暇くらい、気軽に取ればいいものを。
     その後いつも通り朝の散歩をしたあと、ラディムから軽い護身術を教えてもらった。人間の急所というものの場所を教えられたのは初めてではないが、あれは剣術の稽古の場所であって、人とやり合うためではない。そのため、十九を迎える日のひと月前でも初めて知ることが多かった。きっと、俺が一人で身を守れるようにしてくれたのだろう。
     ラディムが留守の間の護衛は、同じく雇われの兵士に父が頼んだらしい。自分の知り合いだから信用していいと、ラディムは俺の頭を撫でる。部屋に戻れば、その兵士が挨拶に来る頃合いだ。ラディムの知り合いなのだから、きっと陽気に違いない。
     ラディムは膝についた土埃を払い、立ち上がる。そのとき風が吹き、普段は長い前髪で隠れている眼帯があらわになった。
    「おっと、今日は風が強いな。気をつけて行かねぇと……って、ミカ? なんでついてくるんだ?」
    「仕方ねぇから見送りしてやんの。感謝しろよ」
     ざり、と土を踏み、ラディムの後に続く。素直に言葉が出てこないのは、自分でも諦めている。ほんの少しだけ本音を混ぜた可愛げのない言葉を吐けば、ラディムはその碧い目を細める。「ありがとさん」と両手で頭をわしわしとされると、心臓の音がうるさくなる。この気持ちと向き合うのが怖いから、俺はずっと聞き出せずにいることがある。
     ラディムの首には、タグと一緒に宝石が埋め込まれたアクセサリーが提げられている。そのデザインがどう見ても男相手に作られたものではなく、それを見つけてしまってからというものの、あまりラディムの部屋に行けなくなった。自分の気持ちが何なのか、分からないほど馬鹿ではないから、怖いのだ。俺の知らないラディムがいると思うと、ひどく胸が苦しくなる。
     門の裏口は、薔薇園に隠れている。そこまでたどり着くと、ラディムは「じゃあな」と俺の肩をぽんと叩いた。首のアクセサリーが、太陽の光を反射してきらめいている。それ以上に美しい青の瞳を見つめていると、ラディムが屈んでくれた。
    「またオレの目見てたのか? どこがいいのか知らねぇが、ミカが好きって言ってくれんの、結構嬉しいぜ」
    「う、うっさいなあ。仕方ないだろ、おまえの目、奇麗なんだから」
    「変わりモンだな、ミカちゃんは。オレはその金色の目の方が好きだけどなあ」
    「ぁ、えっと、え……?」
     さわさわと吹く風が、微かに弱まっていく。ラディムの声しか聞こえない。ラディムが、俺の目を好きだと言った。柄にもなく嬉しさでにやけそうだ。
    「ふは、間抜けな顔してんなあ。留守にするけど、眼帯新調しに行くだけだからそんなに時間はかからねぇはずだ。心配なら来るか?」
    「まっ、間抜けじゃない! 心配もしない! ……まあ、父様に言えば、行けると思うけど」
    「冗談だっての。ミカは強い子だもんな、いい子で待ってろよ」
     俺の耳飾りを触り、ラディムが目尻を下げる。その左目は眼帯で見えないけれど、色が違うだけで、表情は同じだろう。
     背伸びをする。風が止む。ラディムの隠された左目に唇を寄せると、背中に手が回された。
    「なんだよ、また甘えてんのか?」
    「ち、違う。おまえが、その、護衛が怪我とかしたら俺が危ないし、怪我しないように願掛けしてやったんだよ、ありがたく思えよな」
     俺が仕方なくやったというのに、ラディムは肩を震わせて笑いを堪えている。「ほんっと分かりやすいな、ミカルは」とラディムに頬を撫でられるこのときだけは、首飾りのことを忘れられた。



    ***



     ラディムが故郷に帰ってから、今日で三日目だ。二日で帰ってくると言っていたのに、当然のように遅れている。
     俺はメイドに起こされ、ベッドから抜け出す。付き合いの長い彼女だが、最近までは会話をすることがなかった。メイドと話すようになったのは、ラディムが来てからなのだ。
    「ミカル様、ボタンをかけ違えています」
    「……すまない」
    「ラディムさんが心配ですか?」
    「ちが、あいつは関係ない」
    「ふふ、あまり余計なことを言うと言いつけられてしまうかもしれませんね。ですが、私たちもミカル様を誤解していたのでしょうね」
     以前の俺は冷たくて傲慢に感じられ、仕えるのも嫌だったのだと、彼女は笑う。それが悪いことではないけれど、と付け足して、メイドは釦を丁寧に閉めていく。
    「今のミカル様は、人を受け入れることを、人に愛され愛することを知ったように見えます。ラディムさんのおかげですわね」
    「あっ、愛……!? な、なな、んなわけあるか、俺は別に……!」
    「そういう反応ができるようになられたことも、成長だと思いますわ」
     本当の兄弟みたいだと、メイドは言う。次の仕事に向かった彼女と別れてしばらく経っても、俺は『愛』という単語を忘れられずにいた。
     愛とは、何だろうか。そこまで難しい話でないと頭では分かっているが、いざ真剣に考えようとすると胸がむず痒くなる。不意にラディムの顔が浮かび、慌てて消す。確かにあいつの目は好きだが、愛と呼ばれる形に当てはめるのは少し恥ずかしい。

     起床したあとは、ラディムの知り合いだという護衛と共に、朝の散歩をする。彼は無言で俺を穴が開きそうなほど見つめてくる。正直、いたたまれない。
    「……俺の顔になにかついてんのか?」
     意を決して尋ねてみると、彼はふむと顎に手を当てて考える。答えにくいのだろうかと眉を顰めると、ややあって彼が口を開いた。
    「いや、ラディムから話を聞くまでどんなクソガキかと思ってたんだけどよ。あいつ、あんたのことしか喋らないから相当気に入ってんだなって思って。で、今日初めて顔を見ただろ、まあ奇麗な顔してるよな」
    「……はあ。そりゃどーも」
    「褒めてんだよ。ラディムなあ、あれがあってからくにに帰るだなんて一言も言ってなかったし、くにのこと恨んでたんだろうけど、そうかあ、帰ったか。きっとあんたがラディムを変えてくれたんだな」
     気さくに笑う彼の口調が、ラディムと重なる。母国で何があったかなんてことは、聞かない方がいいだろう。いつか、本人の口から聞くことができればそれでいい。
    「……なあ、ラディムは、今の仕事好きだと思うか?」
     代わりに、今の俺が聞きたいことを尋ねた。すると彼は、にまにまとこちらを見つめてくる。何か変なことを言っただろうか。
     俺がよほど怪訝そうに見ていたのだろう、代理の護衛は姿勢を正し、慌てたように両手を顔の前で振る。
    「あー、からかうつもりはねぇんだ。ただ、ラディムが誰かに懐かれるのが珍しくてよ」
    「……懐く」
    「あっ、いや、ラディムがいつもあんたのこと黒猫だのなんだのって言ってるから、つい。……そうだなあ、ラディムは今の仕事、ちゃんと好きだと思うよ。嫌いだったら六ヶ月も続かねぇよ、俺ら雇われてるだけなんだからよ」
     その言葉に、心底安心した。それと同時に、早くラディムが帰ってこないかとそわそわする。思わず裏門を覗き込むと、後ろで「愛されてんなあ、ラディムのやつ」と呟く声がした。



    ***



     結局、ラディムが帰ってきたのはそれから二日後だった。渡したいものがあるとラディムの部屋に呼びつけられ(護衛に呼びつけられるのもおかしな話だ)、一人ろうそくの灯りを頼りに夜の城内を歩く。自分らの部屋でまだ食事中のメイドたちの会話を聞き流しながら、ラディムの部屋の扉を叩いた。
    「ラディム、入るぞ」
     そっと扉を押し、中に入る。すでに着替えを済ませていたラディムがテーブルの上に小物を広げており、それらは部屋の灯りを受けてきらきらと輝いていた。
     じいっと見つめていると、ラディムが俺を椅子に座らせる。
    「これ、なんだ?」
     俺が問うと、ラディムは「これはな、全部魔石だ」と楽しげに言い、俺の頭に顔を寄せる。くすぐったくて身をよじると、心のこもっていない謝罪が聞こえてきた。
    「魔石って、なに」
    「魔力がこもってる、お守りみたいなもんだよ。どれがいい?」
    「……ラディムが、選んで。おまえが選んだやつが、ほしい」
     どの色も奇麗で、選び難い。ラディムに選んでもらった石ならば、きっと今後も自分を守ってくれる。そう思って何気なく発言したのだが、返事がない。不思議に思ってラディムの方を見上げると、その顔は複雑そうに歪んでいた。
    「なんだよその顔。いいよ、選びたくないなら勝手に選んでやるから」
    「あー、いや、そうじゃないんだが……なんつーか、可愛いな、お前」
    「うるさい。いいから早く選べ」
    「はいはい。……そうだな、この色なんかいいんじゃないか?」
     そう言って、ラディムが青い石を見せてくる。奇麗で、どこか寂しそうな色だ。何となく、ラディムの目の色にも似ている。
    「大体想像つくと思うが、この石を持ってると水の精霊が守ってくれる。ここは雨も多いし、水の加護をもらっておけばいいんじゃねぇか?」
    「……ラディムの、目の色だな」
    「本当に俺の目が好きなんだなあ、ミカルは」
     喉の奥で笑うラディムの左目には、新しい眼帯がつけられている。それを見つめていると、ラディムが屈んで目を合わせてくれる。
     俺は眼帯の奥にある左目を思いながら、五日前そうしたように、もう一度そこに口づけた。「おかえり」という気持ちを込めながら何度も口づけていると、不意に唇に指が押し当てられる。目を開けると、意地の悪い表情のラディムが俺の唇をつついてきた。
    「気持ちは嬉しいけどよ、ちょいと熱烈すぎるかもな」
    「はあ!? かっ、勘違いすんな、おまえが帰ってくるのが遅いから……!」
    「そうかそうか、寂しかったか。ただいま、ミカル」
    「べつに、寂しくなかったし……っつーか、抱きしめんな」
    「逃げればいいだろ。ま、俺の服を一生懸命握ってるみたいだから、ミカちゃんには難しいかも知んねぇけど」
     頭ごと抱きかかえられ、ラディムの肩口に顔を埋める形になる。視界の端に映った首元には、タグと、出かける前と同じ首飾りが提げられていた。
     今度は、ラディムの口から故郷の話を聞きたい。首飾りのことも、聞いてみたい。いつものように聞けば答えてくれるとは思うが、それは今ではない。
     ラディムの背中に手を回し、目を閉じる。五日ぶりの葉巻のにおいと香水の香りに、やはり酔いそうになった。
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    takayoshi2222

    DONE昨日書いた創作BL(後半)
    読み直してません
    「終わり?」
    「…はい、終わりです。ありがとうございました」
    細く長いため息をついて、キャップを被せる。梁はケラケラと「くすぐったかったあ」と笑い、背中を摩る。最後の数行のインクが掠れたが、別に動揺はしなかった。
    書き終わって、ただ安心していた。
    彼の仮説は当たっていたようだ。
    また一つ、恩が増えてしまった。
    「どうなってる?撮って撮って」
    「え、えっと」
    「撮り方分かんない?ここ押すだけ。こう!はい!」
    「あ、はい。はい、チーズ…」
    「いえーい」
    はしゃぐ梁に携帯を手渡され、写真を撮る。随分ご機嫌だ。そんなに喜ぶことだろうか。むしろ迷惑に感じるものでは…。
    「あ、アハハ。すげ〜何これ!ぎっちり!読めね〜」
    「今日は、書くことが多くて…」
    「そっかあ。まあそうだよね。あはは」
    彼はしばらく写真を眺めていたが、満足したのか携帯をしまい、服を着た。
    そして大日の左手を掴む。
    「じゃ、終わったことだし行こっかあ」
    「えっ」
    「一緒に行くって言ったじゃん。忘れたの?」
    「あ、いや」
    咄嗟に否定するが、丸っきり頭から抜け落ちていた。先程の行為の衝撃が大きすぎて。
    というか、自分達は一体何をやって 6635