ただの夕立だと、初めは誰もが思っていた。日暮れ前に降り出したその雨は、いつしか土砂降りになり、やがて雷を伴う豪雨になった。
帰宅ラッシュのMIDICITY交通網に影響が出始めると、タクシー乗り場や駅構内は必然的に帰宅困難者で溢れていく。
そしてホームの柱を背に立つヤスとリカオもまた、行き場をなくしたミューモンのうちのふたりだった。
「…止みそうにねえな」
「……そうだな。」
「あんま濡れなくて良かったな」
「あぁ。」
「…ああいうショーって、あんま見た事なかったけど、案外悪くなかったよな」
「俺も、子供の頃以来だった。勝つと分かっていても応援したくなるあの感覚は…少し懐かしい気分になった…です。」
「あ、それちょっと分かるわ。シナリオとか決まってんだろうし、ぜってえ負けるわけねえのに『レッド頑張れ‼︎負けんな‼︎』ってなるの不思議だよな。…あと演奏も良かったし」
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