解熱剤 【プロローグ】
「はぁ、はぁ……」
昼下がりの院内、辺りは忙しなくいつもの日常が通り過ぎる。
「っ、はぁ、は、ぁ……」
治療を受ける子供の泣き声、宥める看護師の声。パタパタと走り回る人々の喧騒、笑み、悩み。何も変わらない、あたりまえの日々。
どさり。不自然な音が廊下に響く。
「神宮寺先生?!?」
「先生! どうされましたか、先生!?」
日常は変わらず続くと思われた。
一人の男が意識を失う、
"あの時" までは――。
◇◇◇
「寂雷が倒れた?!」
突然の大声に道行く人が驚いたように振り返る。声を潜めて俺は電話を続けた。
「あいつは今何処に?」
『ご自宅に向かわれました。あまりに容体が悪そうで付き添いを申し出たのですが、その……』
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