特権 シャワーを浴び終え、下着だけを身につけたポルナレフは、開けたドアから見えた光景にその双眸を丸くした。
「………………」
まだ水滴が落ちる髪をタオルで押さえながら、二つ並んだベッドに歩み寄り、窓側のベッドのヘッドボードに背を預けたまま動かない男を見遣る。
自分がシャワーを浴びている間に着替えたのだろう、交代でバスルームに入る前に見たバスローブはゆったりとしたワンピースの民族衣装のような部屋着に変わり、投げ出された足の上にはペーパーバックが開かれたまま乗っている。
「アブドゥル?」
呼ばれた男は声に反応することなく、その肩がゆっくりと上下に動き、耳を凝らせば小さな寝息が聞こえている。
顔を覗き込むと閉じた瞼の上、黒々とした太い眉が中央に寄っていた。
9147