愛雨祈願 ざあざあと騒がしい音を立てて地面を叩く雨粒を見つめながら、僕はどうしたものかと頭を悩ませていた。
遠見さんからお遣いを頼まれたのはつい十分ほど前のことだ。部屋に籠って読書ばかりしていたら身体に良くないと言われてしまえば、返す言葉なんてなかった。たまには散歩するのも悪くないかとメモとバッグを受け取って家を出れば、雲間から射し込む太陽の光が海面できらめいているのが目に入った。こういう景色は、あの島に負けないくらい綺麗だと思う。
―――そう、思っていたのに。どうしていきなり大雨になるんだ。この島の天気どうなってるんだ?
「にわか雨、って言うらしいぞ」
右隣から声が降ってくる。大して大きくもないのに雨音に掻き消されることなく耳へと届いたそれは、僕がこの島で一番会いたくない奴の声だ。
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