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    のくたの諸々倉庫

    推しカプはいいぞ。

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    DONE等身大のしあわせを/鍾タル

    (いや起きてるけどね。ストレートに誘わないといけないかあ……ピュアすぎるよ先生……)とか思いつつ嬉しいタルはいます
    青空が夕闇への抵抗を弱め、舞台を夜に切り替える──そんな境目の時間が、思えば俺は好きなのだと思う。
    「公子殿、邪魔をするぞ」
     合鍵と上等な酒を手に、彼の住まいへと足を踏み入れた。璃月におけるその場所はどうやら、公子殿にとっては「帰る場所」というよりは「雨風をしのぎ眠る場所」という認識のようで──家具も生活感もろくにない室内、寝台に横たわる彼は微動だにしない。
    「……公子殿?」
     おかしい、なんの反応もない。彼の立場や職業上、来客が全て好意的なものでないことなど明らかで。それでもただこんこんと眠っている辺り、何かあったのだろうかと胸中が波立つ。
     慌ててその口元に手をかざせば、すうすうと規則正しい寝息を感じた。とりあえず生きていることは分かったが、それにしても不思議なほど、起きない。
    「……薬でも盛られたのか?」
     しかしその寝顔はひどく安らかで、年相応の幼さすら感じられる。これはただ、本当に寝入っているだけか……?
    「公子殿」
     試しにもう一度呼んで、滑らかな頬へと指を這わせた。んん、と少しだけ眉がひそめられるが、やはりそれ以上の反応はない。
    「……相手が俺でよかったな」
     ほんの小 898

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    DONEヤンデレ先生の可能性を考える/鍾タル

    タルがモブとの恋愛を仄めかします。捏造など諸々許せる方のみどうぞ。
    窓の外の俺を認めるなり、深海の瞳が見開かれる。寒いから入れてくれ、とジェスチャーで伝えれば慌てたようにドアが開いて、記憶の中と寸分違わぬ青年が現れた。
    「鍾離先生!? 久しぶりだね……!」
    「……ああ、久しいな。ここ50年ほど、会っていなかったか」
    「はは、当たり前だけどあの頃と同じ姿なの先生だけだよ。いや俺も、もしかして変わってない?」
     そうだな、と頷きながらも招き入れられた家の中は、雪国らしく大きな暖炉があって──その上に置かれていた写真立てには、愛らしい女性の笑顔がある。ただ少し、色褪せが始まっているだろうか。
    「まさかスネージナヤまで来てくれるとは思わなかったよ、嬉しいなあ」
     言いながら差し出されたココアを飲みながら、見つめた彼の目はほんの少し赤い。うっすらと浮かぶ寝不足の証も僅かな鼻声も、理由を知っているからこそ問うことはしなかった。
    「……ねえ、先生。俺ほんと、どうしちゃったんだろうね」
     スネージナヤには不老不死の男がいる、という噂話をたどり、彼を訪ねてここまで来たが。うつむく彼の言葉は重く、俺は静かに目を伏せた。
    「……お前は人外に好かれやすいのかもしれないな」
    1581

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    DONE「俺たちだけのかみさま」/転生話。死ネタなど含みます(+時事ネタ)

    後で色々修正して支部に上げるやもしれません。何でも許せる方のみどうぞ。
    その男はただ、岩のように目を閉じていた。
    「……ねえ、お兄さん大丈夫? 生きてる、よね」
     その様子を見かねてか、声をかけたのは茶髪の青年だ。腕組みをして道端に1人、微動だにしなかった男の目がゆるり、と開かれる。
    「ああ、生きているぞ」
    「よかった、さすがに立ったまま死んでる……なんてことはないと思ったけどさ」
    「……ふむ、お前はひとつ、失くしものをしているな?」
    「へ……」
     言われて青年は、深海の瞳をひとつまたたく。どうして、とこぼれたその言葉が、続く理由で問いになるのを待つ間──男こと鍾離はふと、とあることを思いついた。
    「よく分かったね、お兄さん。俺この辺りについては詳しくないんだけどさ、どうしてかずっと……うん、それこそ生まれてからずっと、ここに大事なものを落としたような気がしてて」
    「そうか、ならば俺も……お前と一緒に探し物をしよう」
     言うなり鍾離の体から、ふわりと光が浮かんでは消え──青い瞳の青年が呆然と見守る中、それらが全て宙に消えてから、「それでは行くぞ」と背を向けた。
    「……お兄さん、今の何?」
    「鍾離だ。大したもの……ではあったが、俺が持っていると不公平になるも 9750

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    TRAININGワードパレットとかその他諸々。散る紅葉の中を、ただどこまでも歩く。けれど季節は巡らず、白の大地にたどり着くこともない。
    「戻る道などないぞ」
    「やだなあ、分かってるよ」
     文字通り雲の上のひとだと思ってたのに、神隠しなんて安いことするなあ。



     触れた頬が既に冷たいことも、流れ落ちることなく凍ったのであろう命の色も……ああ、これが末路かと息をついた。
    「せんせ、大丈夫?」
     大丈夫ではない。なにせお前の死を悲しんで……ん?
    「その人は俺の影武者。あーあー無残にやられちゃって、これは仕返しが必要だなあ」
    「……なぜそんなものを準備した?」
    「いや? 先生が悲しんでる隙に襲ったらどうなるかなあと。まあやめたんだけどさ」
     言って、指の隙間から武器を霧散させて──公子殿はにやりと笑う。
    「先生、そんな顔もできたんだね」


     人は地に足をつけて歩く生き物だ。道具や特殊な方法で飛ぶことこそできるが、基本的には重力に抗うことはできない。
     ならば、と空を見上げる。流れるひとすじの光は、いつかどこかで聞いた話によれば──地に着くことはあまりなく、空中で燃え尽きるものばかりだ、と。
     だからこそ、惹かれたのだろうか。そうかも 649

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    DONE世界5分前仮説/共生鍾タルのネタをお借りしました。「ねえ、先生。今いるこの世界が5分前にできたものだ、っていう仮説、知ってる?」
     言われて少し考え込んだ。問われた言葉の意味が分からない、というより──その問いから後、彼が何を言いたいのかがよく分からない。
    「聞いたことはある。この世界は5分前につくられたものであり、今俺たちが持っている記憶などは全て、創造主による捏造なのだ、という話だろう」
    「そうそう。もしそうだったらすごいなと思ってさ、だって世界は広いんだよ? あちこちで矛盾が出ないように、それでいて複雑に絡み合った『設定』の上……俺たちは今、こうやって息をしてる」
     言いながら、彼の指が伸びた。首の輪をついと撫ぜ、岩元素のマークを通り、その服の下、彼を生かす力の核へと。そうして「ね、不思議でしょ」なんて。
    「先生は6000年の時を生きたカミサマでさ、俺はそんな先生と一緒に生きてる元人間。そんな設定のもと、たった5分前に俺たちがこの地に足をつけたっていうなら……こんなにおかしなことはないなって」
    「どうして、おかしいんだ」
    「俺はね先生、生かしてくれたことに感謝してる。ずっと一緒に生きられるなら、他の何と別れることになってもいい、 1323

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    DONE論破パロでそれぞれがクロのやつ▼タルタリヤさんがクロに決まりました。オシオキを開始します。

    「……嘘、だろう?」
     言いながら、ふらりふらりと歩み寄ろうとする先生を手で制した。
    「ほんとだよ、先生」
     ああ、今俺はうまく笑えているだろうか。殺害動機は故郷の家族を守るため、なんて言えば誤魔化されてくれるだろう、この愛おしきカミサマは──しかし今、全ての力を封じられ、今から俺に降るであろう死の雨を防ぐこともできないのだ。
    「ごめんね、先に逝くよ。
     ……生きて帰るんだよ、先生」
     だから彼が伸ばす手を、ひらりと避けて処刑場へと踏み込んだ。いつもの軽薄な笑顔で、彼の愛した「タルタリヤ」のまま。
     そうして先生が俺を呼ぶ声を遮り、重い扉が閉ざされる。途端込み上げた狂うほどの笑いを、噛み殺すことができない。


     ねえ、先生。これで俺は、先生の「永遠」になれるのかな。






    ▼ショウリさんがクロに決まりました。オシオキを開始します。

    「……なんの、冗談?」
     言われて少し考える。なるほど、公子殿は俺が殺しをしたことが信じられないらしい。そうして今から、俺が処刑されることも。
    「……すまないな、お前たちを守るために… 699

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    DONE【小説だよ】鍾タル。伝説任務とかの内容には触れてないです。捏造しかないよ。

    「空になりたかった話」
    職業柄、というのと元々の性格もあり、人の噂にはそこそこ敏感だと思う。
    「……えっ、鍾離は風の翼を使わないのか?」
     だから万民堂から聞こえた声に、思わず足を止めかけて──というか、声の主も話題の主も明らかなそれを放っておく手はなかった。ほぼ直角に歩行コースを変えた俺を、道行く人が変な目で見ているが許してほしい。
    「そうだな、璃月港から離れること自体少ない上……大方ワープポイントで事が足りる。あれは便利なものだな」
    「ほへえ……つまり登り降りとか全部徒歩か。すごいな鍾離は……オイラなんか常に浮いてるのに」
    「パイモンは風の翼関係なしに飛んでる気がするけど……」
     そして共に食事でもしていたのか、テーブルを囲む3人……いや2人と1匹? いやもっと違う何かか? ともあれ見慣れた姿が目に入る。俺が声をかけるより早く、まずこちらを向いたのは鍾離先生だった。
    「公子殿か、珍しいな」
     ……なんでちょっと嬉しそうなんだろう。背景に花が飛んでる気さえする。
    「思いっきり声がしたからね、俺が払うから相席しても?」
    「お、いいぞ! おい蛍、いっぱい食べようぜ!」
    「あはは……現金だなあ」
    「でも食べるんで 6693