花をください痣の代償。大きな力の裏には何かある。
そんなもの、信じられなかった。信じたくなかった。全ての戦いが終わり、自分は完全ではないが人間に戻った。正式に結婚して、彼によく似た男の子を産んだ。ずっと焦がれていた。彼の妻になることに。ずっと憧れていた。彼の子を産むことに。
なのに。
「炭治郎は、二十五の歳になるまでに死ぬ」
愈史郎から、そう告げられた。腕の中で可愛い息子が眠っている。すぴ、と鼻の詰まった音がした。
「子供が産まれたばかりなんだよ」
「どうして、」
「禰豆子の嫁入りも決まって、炭治郎凄く嬉しそうで」
「子供が、産まれたばかりなの」
空っぽの瞳は何も映さない。子供を抱く手が震える。この子が起きてしまう。冷静にならなければ。
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