めぐり「カナタ、今日は魘夢お姉ちゃんの所にお泊り行ける?」
忙しそうに動く母に言われて、カナタは「うん」と言った。カナタは自ら親戚、厳密には高祖母の元へ行く事は滅多にない。弟は入り浸っているみたいだが。
「炭彦、そんなに悪かったの?」
「インフルエンザ。学校がお休みとは言え、カナタも感染ったら大変でしょ?」
「まぁ、嫌だね」
電話しといたから、と言う母にカナタは腰を上げた。泊まりの準備の為に部屋に入らなくてはいけない。使い捨てのマスクをしてから、弟と共同の部屋に入った。
空間除菌の匂いの中、タンスから着替えを取り出す。後は暇潰しになるものも…と考えながら二段ベッドの一段目で眠る弟を見た。
正直、寝ていて良かった。あの人の所に泊まりに行くと知ったら、きっと面倒な事になっていただろう。そんな事を思いながら荷造りを終わらせた。
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