雇ペス燻る苛立ちを酒で飲み下す。この行きつけのくたびれたパブはいつもほどほどに人がいる。賑やかさは煩わしく、静かすぎては落ち着かない気分の時に来ては、片隅でグラスを傾けながらまばらな酔客たちをぼーっと眺めたり、自分の考えをまとめる場として使うことが多い。今日はこの先の捜査をいかに一人でやっていくかを考えていたが、まともな考えが浮かばないまま空のグラスばかりを重ねていた。上の決定を、俺はいまだ納得できずにいる。
確かにここアウトランズの治安はいいとは言えない。盗み、密輸、詐欺、そして暴力。大抵の犯罪は毎日大盤振る舞いだが、ウチが捜査していたのはいつもの突発的犯罪ではなく組織的に行われている人身売買についてだった。証人は誰一人として居らず、被害者と思しき行方不明者が増えるばかりで、いくら追いかけてもバイヤーや顧客たちは煙のごとく消えてしまう。何も掴めぬまま焦りだけが積み上がっていくチームに、タレコミのメールが届いたのは二週間前のことだ。自分と家族の身の安全と引き換えに、知る限りの売買ルートを教えるという。存在しているということしか辿り着けていなかった俺たちにとって、それはまさに光明と言えた。
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