藍曦臣の告白(仮)冬の気配が強まりはじめた、霜月の雲夢。
蓮花塢の修練場では、宗主の誕生日を祝う宴が盛大に行われていた。
蘭陵金氏ほどきらびやかではなく、姑蘇藍氏のように慎ましやかでもない。
ほどよく贅沢で賑やかな宴は、夜どおし盛り上がるだろう。
露天の修練場には大きな卓と長椅子がいくつも並び、卓は豪華な料理や酒で埋め尽くされている。
江氏の門弟たちは、滅多に口にできない美味を全力で堪能していた。
長椅子に腰かけた江晩吟は、そんな彼らを静かに眺めている。
「江宗主……」
一人で杯を傾ける江晩吟に、誰かが背後から声をかけてきた。
振り向くと、そこには藍曦臣がいた。
体裁的に宴の招待状を送っていた事を、江晩吟はすっかり忘れていた。
今日の彼は喪服のような白い衣ではなく、爽やかな淡い水色の衣を纏っている。
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