放課後のことである。
「──────大っ嫌い!」
校舎から宿舎へと移動をするその最中、突如、甲高い女の罵声と共に肌を打つ乾いた音が響き渡った。
驚いて視線を向けた先には、石畳の上、向かい合って佇む男女の姿がある。片方は並外れた長躯に黒を纏うアイマスクの男で、一方は見慣れた白と緋の巫女装束姿の女性である。
五条悟と、歌姫先生だった。
仕事の都合で来たのだろうか、京都校ではあまり見かけない特級呪術師はきょとんとした様子で左の頬を覆っていた。張り手を受けたようである。今まさに右手を振り抜いたばかりの格好で息を切らす歌姫先生は、親の仇でも見るような鋭い目をして五条悟を睨みつけると、戦慄く唇を大きく開いてこう叫んだ。
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