甘味処チャヤヤ新作の『溶けないパフエ』――自信を持って新しい氷菓子を売り出したチャヤヤの店主は、しかし厨房にて頭を抱えていた。
「うう……思ったより売り上げが伸びないし……仕入れの支払いだけでいっぱいいっぱいだし……」
閉店後の厨房で帳簿を見つめ、眉を寄せるクロマ。並ぶ数字は利益がほとんど出ていないことを示していた。
「むう」隣で同じように唸るのは給仕姿のアンジュである。「余は商いには詳しくないが、これは危ないのか?」
「すぐに潰れるとか、そういうのじゃないけど、来月も続くとちょっとまずいかも……」
アンジュが溜め息を吐く。
「思ったより客が入らなかったからの。どれだけ美味い菓子も、まずは店に来てもらわねば売りようもない」
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