――其方の秀でた個の武は、仲間の存在があればより活きる。
――ヴライよ、励むがよい。
この世で唯一[[rb:主 > あるじ]]と仰ぐ御方の言葉は、ヴライを大層困惑させた。
戦場で必要なのは力、力無き者が幾人集まろうとも無意味、そして大方のヒトはヴライより弱い。弱者に意味はない。それを活かせと聖上は言う。己が武のみを追求してきたヴライにとって、これは難題であった。
「だから[[rb:汝 > うぬ]]を雇った」
「なるほどなるほど」
ヴライの語りを聞き終えてのち、采配師は「つまり、私に何をお求めに?」と訊ねた。
「我の武を活かせ」
「つまり具体案はない、と。とんでもねえ雇い主だな、あいや失敬、失言でした」
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