或小倅の遠回り 日照る夏のこと、ひとりの男が工具箱を片手にかぶき町を歩いていた。ブルーの作業着に、同じ色のキャップを深く被っている。わずかに見える髪色は、陽の光を受け輝く金。鮮やかな碧眼に、端正な顔立ち。この炎天下に歪むこともなく、汗のひとつもかいていない――機械・坂田金時は住まいである源外庵を出て、万事屋へと向かっていた。
テレビが付かなくなったと、天パ侍が平賀源外へ修理依頼をよこしてきたのだ。しかも物臭な面々は、台にしっかりと設置してあるテレビを取り外すことは早々と諦めており、源外に来るように要求した。年寄りを炎天下に歩かせんじゃねえよ、ともっともなことを言った爺に、受話器の向こう側の奴が何やらごねたらしい。普段から行儀が良いとはいえない爺さんは、しまいにはうるせえ! と受話器を叩きつけていた。ソファに腰掛け、手元の玩具を修理しながら一部始終を見ていた金時が、くくっと喉を鳴らす。
4523