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    85_yako_p

    カプ入り乱れの雑多です。
    昔の話は解釈違いも記念にあげてます。
    作品全部に捏造があると思ってください。

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    85_yako_p

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    大河タケル生誕祭。たぶん2018年。

    ##大河タケル
    ##牙崎漣
    ##カプなし
    ##誕生日

    イチゴの乗ってないケーキ 言い方は悪くなるが、不器用とバカってきっと紙一重だ。もう夜も遅い時間に現れた来訪者にそんなことを思う。
     ちゃぶ台の上に乗せられた、バカでかい箱が四つ。その箱を開ければ色とりどりのケーキが、数えるのもバカバカしいほどに入っている。そのケーキはどれもこれもが傾いたり崩れたりしていて、この箱を運んできた人間がコイツであることを証明するみたいに佇んでいた。
     部屋には俺とコイツしかいない。事務所のみんなとだって分け合えそうな量のケーキは、俺と、コイツ、二人で分け合うにはあまりにも多い。
    「なんだよ」
     不機嫌そうに、コイツが言う。早く選べ、とケーキを指差す。一つとして同じ種類のないケーキは、何件も何件もケーキ屋をハシゴして、全部の店で、そこにあるケーキを全部買い占めたんだろうな、っていうのがわかる。
    「聞いてたのか」
    「知るか」
     このケーキの群を見る、今の今まで忘れてたことがある。隼人さんと、四季さんと、少し前に事務所で話してた、よくある話。
     
     クリスマスには、なんで苺のショートケーキなんだろうな、って。
     
     街角で売ってるケーキも、施設で出てきたケーキも、ジムの人が買ってくれたケーキも、みんなショートケーキだった。さっきまで事務所でしてた誕生日パーティの、十二月生まれの俺たちへの誕生日ケーキも。これは偶然だろうけど。
     この時期に生まれると、だいたい誕生日ケーキとクリスマスケーキは一緒くたにされるんだ、なんて。だから、誕生日ケーキは、全部ショートケーキだった。俺、ケーキを選んだこと、ないかもしれない。
     たんなる笑い話だ。あのときオマエは事務所のソファーで寝てたと思ったけど、聞いてたのか。それとも、後から四季さんか隼人さんに聞いたのか。
    「いいから選べよ」
     不機嫌そうな声色が少しさまよう。なにか、間違ったことをしたのか、とでも聞きたげな、らしくない声。
    「……ケーキ、選んでみたかったんだろ」
     チョコのケーキ、桃のケーキ、チーズケーキ、ロールケーキ、あとは、みんな名前のわからないケーキ。コイツは来なかったから知らないだろうけど、俺はさっきまで事務所のみんなに祝われて、散々飲み食いしてきたんだ。それなのに、ケーキはどれもおいしそうに見える。
    「…………選ばねぇならオレ様が食うぞ!」
    「待てよ。なんだよ、選んでいいんじゃないのか」
     いつもの言い合いが始まるかと思った。だけど、コイツはまた居心地が悪そうに黙ってしまった。
    「……時間がかかる。俺はさ、選ぶの、慣れてないんだ」
     だいたい、もらえるものは決まってた。限られてた。その中でも、妹や弟の選ばなかったものを手にしていた。別にそれでもよかったんだ。
     だけど今、目の前にある大量のケーキを真っ先に選ぶ権利が俺にはある。与えられた、多すぎる選択肢に、少しだけクラクラしていたんだ。
    「…………これ」
     選び終わるまで、コイツは待っていてくれた。散々時間をかけて選んだのは、まん丸なふわふわに三角のチョコが二つ刺さった、ネコを模したケーキ。
    「次、オマエが選べよ」
    「は? なんでオレ様が選ぶんだよ」
    「一人じゃ食いきれない。……それに、全部が俺のものだったら、選ぶ、ってのは出来ないだろ」
     二人でも食べきれる気はしなかったけど、それを言うのは間違っている気がしてた。
     しばらく黙った後、コイツは無言でケーキを取った。イチゴのショートケーキ。俺が選ばないだろうケーキを、って考えたのがよくわかる。
    「次、オマエ」
    「え? そういう感じなのか?」
     また、たっぷりとした時間をかけて、俺がケーキを選ぶ。選び終えてコイツに目線をやると、コイツはすぐに、別の箱に入っていたイチゴのショートケーキを手に取った。
    「オマエの番」
    「……ズルくないか?」
    「くはは! ほら、早く選べ」
    「待てよ、取ったケーキ食ってからだ」
     その後、ケーキを食べて、選んで、また食べて、選んで。お互いに意地を張って、手を止めるまいと手を伸ばして、そのうちにどちらともなく箱を閉じて、大きな箱を冷蔵庫にしまった。何も入ってなかった冷蔵庫がケーキでいっぱいになって、アイツは帰るって言わなくて、俺は口の中がひたすらに甘ったるくて、だけどとても気分が良かった。寝る、とベッドに乗り上げようとするアイツを引きずりおろして、しばらく取っ組み合って、それにも飽きて歯を磨いていたら、アイツは座布団とぬいぐるみをかき集めて床で丸まってしまった。冗談だ、ベッド乗れよ。そう言ってもアイツは面倒くさそうにぬいぐるみを一つ、こちらに投げてきただけだった。風邪を引いたらいけないからベッドに引っ張りあげたけど、力の抜けたコイツはぐにゃぐにゃしていて、特に抵抗しなかった。
    「なぁ、おめでとうって言ってくれよ」
     電気を消して、背中に投げかける。もしもコイツが寝てたら、返事なんてなくてもよかった。
    「生まれただけで、何がめでてぇんだよ」
    「それもそうか」
     それでも、俺はオマエの誕生日におめでとうって言うだろうな。
     そう言えば、コイツは俺の子供みたいなワガママを叶えるために、大仰に口を開いてみせた。
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