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    あんず

    かもがわ たかお

    MOURNING小国の姫であるあんずが、えでんの人たちが治る大国に嫁いできた!みたいなやつです 茨あんです
    ふわっとファンタジーなのでオ?と思っても見逃してくれると助かります 続きはありません
     緑と資源豊かな小国の姫が、隣接する雪で閉ざされた帝国へ嫁いで来たのは、ある春の頃であった。春、と言っても、寒冷地に根を下ろした帝国で、花の咲く季節は極めて短い。姫が帝国に輿入れしてきた時も暦の上では春を謳いながらも、土地には未だ雪景色が広がり、寒々しい灰色の雲が青空を覆い尽くしているような、そんな時節であった。
     姫と呼ばれた娘は、未だ少女と言えるような柔らかい肢体に花嫁衣装を纏わせて、厳かな謁見の間に於いて膝跨いて顔を上げない。まるでその純白は死装束の様だと、王の隣に控え立つ宰相-茨は思った。雪で閉ざされる期間が長いこの国で、資源確保の問題は現在過去未来に至るまで永劫の問題である。その中で隣接する豊かな小国とのいざこざは絶えず起こっていたが、現帝は争いを好まず侵略も是としないため、当代は双方珍しく穏やかな時代を過ごしていた。その中でその平穏を確固たるものにしようと送られてきたのが、姫-あんずと呼ばれる少女であった。
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    kotobuki_enst

    DONE膝枕する英あん。眠れないとき、眠る気になれないときに眠りにつくのが少しだけ楽しく思えるようなおまじないの話です。まあ英智はそう簡単に眠ったりはしないんですが。ちょっとセンチメンタルなので合いそうな方だけどうぞ。


    「あんずの膝は俺の膝なんだけど」
    「凛月くんだけの膝ではないようだよ」
    「あんずの膝の一番の上客は俺だよ」
    「凛月くんのためを想って起きてあげたんだけどなあ」
    眠れないときのおまじない ほんの一瞬、持ってきた鞄から企画書を取り出そうと背を向けていた。振り返った時にはつい先ほどまでそこに立っていた人の姿はなく、けたたましい警告音が鳴り響いていた。

    「天祥院先輩」

     先輩は消えてなどはいなかった。専用の大きなデスクの向こう側で片膝をついてしゃがみ込んでいた。左手はシャツの胸元をきつく握りしめている。おそらくは発作だ。先輩のこの姿を目にするのは初めてではないけれど、長らく見ていなかった光景だった。
     鞄を放って慌てて駆け寄り目線を合わせる。呼吸が荒い。腕に巻いたスマートウォッチのような体調管理機に表示された数値がぐんぐんと下がっている。右手は床についた私の腕を握り締め、ギリギリと容赦のない力が込められた。
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