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    ぜた

    限界羊小屋

    DONEゼタナギ クリア後世界
    ワンライテーマ「お祭り」
    迷子の迷子の数学者 油を引いて生地を広げて引き上げる。
     油を引いて生地を広げて引き上げる。
     もう優に百回を超える反復動作を繰り返しながらナギは長い長い溜息をついた。
    「な、何でワイがこんなことに……」
     空は青く高い。爽やかな秋晴れの一日。木漏れ日が揺れるエントランスには名物の立て看板が立ち並び、サークルや語学のクラスごとに出店しているフードの屋台で大学構内が埋まっていた。見学に来た高校生や単に酒を飲みに来た近所の中年まで、学園祭の時だけは普段とは全く異なる浮ついた雰囲気が学内を覆う。
     ナギが選択した文学のクラスの出し物はクレープ。カスタードとチョコとイチゴ、それぞれ400円。それが代々伝わる伝統で、毎年それなりの集客を誇っていた。ナギはそういったイベントに積極的に参加する方ではなかった。だが、クラスメイトたちは友人のバンドを聞きに行くためとか後輩が来てるから案内するとか適当な理由をつけてシフトを抜けてゆく。結局、時刻が13時を回るまでナギは働き通しだった。自らの腹も切なげに鳴ってきているが、手を止める間も無く次から次へとオーダーが飛んでくる。逃げ出す暇もない。
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