金の切れ目が縁の切れ目とは言い切れない借金5000万、それは突然降りかかってきた。

　東京都内、風呂トイレ供用の築50年程のボロアパート。都内にある某有名大学に推薦入学した丹恒はそこに丹恒は住んでいる。まだ物心着く前に両親が離婚し、唯一自分を可愛がってくれていた兄は母親に、丹恒は父親に引き取られたことから丹恒の苦労人生は始まった。離婚前から定職にはつかず、ギャンブルと酒に塗れた生活を送っており、母親に暴力を振るうことも多々あった。それに耐えきれなくなった母親が遂には離婚を申し出た訳だが、何のつもりなのか、父親は丹恒を引き取ることを条件として出したようだった。勿論母親は反対していたが、　子供への虐待の跡が見られないなどの理由が挙げられ、丹恒の親権は父親のものとなったのだった。まだ幼く、あの頃の丹恒には自身の置かれている状況もよくわかっていなかったが、「しばらく会えなくなるけれど、大人になったら、余が必ず迎えに行く」と丹恒の小さな小指に指切りをして伝えた兄の声だと指先の暖かさはいまだに覚えている。