うひゃっ……！

僕の顔より少し上にある耳にふっ、と息を吹きかけると
なんとも愛らしい声が出た

用があるなら口で言え

だから口使ったでしょ　前から思ってたけど
こんなに弱点だらけで決闘どうしてるんです？

誰のせいだと思ってるんだ　ハルが触ったところみんなおかしくなる
前はこんなじゃなかった

なんかすごい事言われてるんですけど
全身性感帯みたいな人が僕のせいだって？
煽りスキル高すぎだろ

嫌ならちゃんと抵抗しなよ　鼻骨折る
くらいしないと止めないよ
じゃなきゃ同意とみなす

……嫌じゃないし　ハル以外なら触られても何ともないし

へーそうなんだー（棒読み）その取調べは家でしようね
…何期待してんだよ　エッチ






君に関わるべきじゃなかった
抱きしめちゃいけなかった

完璧の作り方　荘園には時空を超えた場所である。と、いうのもおとぎ話でしか存在しないような神であるとか、呪いであるとか、そもそもここで主に開催される『ゲーム』からして奇妙だ。自室で寝ていたはずが、ある日突然豪華客船に乗せられ殺人事件に巻き込まれたり、異国情緒あふれる街並みで追いかけっこをさせられたりもする。当初は皆戸惑うものだが、人間も強かなもので回を重ねればさして驚くには値しなくなる。むしろ、どうすれば今回の『催し物』で自分が有利に動けるか——そんなことさえ考えるようになるのだ。
「いくらなんでもこれはおかしくないか？」
ナイチンゲールのサインが書かれたお知らせを読んだクリーチャー・ピアソンはわざとらしく哀れっぽい声をあげた。多分外界の街角なら、お人好しの一人や二人は釣れただろう。

遠回り　なんとか午前で昨日までの出張の報告書が仕上がり、今日はもう退勤しても良いとの指示を受けた。散らかしてしまったデスクを片付け、荷物をまとめて退勤する途中、妙に社内……それも女性陣が色めき立っていることに気がついた。男性社員もまた、どこかソワソワした様子だ。何かイベント事があっただろうか、とスマホで日付を確認して、今日がバレンタインの前日であることに気がついた。
　とある星が発祥のイベント。元々は身近な人に感謝を伝える日だったそうだが、どうにも製菓会社の思惑に乗せられ、好きな人にチョコレートを贈る日になってしまったらしい。私も、日頃の自分へのご褒美に高価なチョコレートを予約注文していた。

　もうそんな時期か、と日々の忙しさに思わず溜息を吐いてしまう。気がつくと一日どころか一週間、二週間と経っている。休みも不定期であるため、日付感覚が狂ってしまいがちだ。