肉まん食べる勝デはふ、とかぶりつく口から白い息が漏れる。
暖かいそれは持つ手を温めると同時に食の幸せを教えてくれた。
「うまぁ……」
至ってただの肉まんだ。数百円のコンビニのそれは、しかし冬の屋外では至高のものとなる。
決して濃くない味付けの肉の、コリコリと歯ごたえを与える筍の美味さ。丁度よく温められた温度の心地よさ。
「たんと味わえや。俺に奢らせるたぁテメェも図太くなりやがって……」
そして、隣に好きな人のいる嬉しさ。
僕が味わうこの肉まんはかっちゃんに買わせたものだ。後悔はしていない。

ヒーローと教師を両立するようになってから、とにかくこの幼馴染は僕を管理したがった。特に事務所勧誘を断ってからは開き直ったようで、一ヶ月ごとのアーマーの具合を聞くのにこじつけて運動量だとか食生活だとかを執拗に問い質してくる。

一昨年の正月に発狂したヤツ？ テレビをつければ年末番組、外を眺めれば恋人や家族で行き交う人々。そんな中、俺ミスタリアスは一人でパソコンのモニターを眺めていた。
「はーぁ、こんな年の瀬に一人かよ」
ママに会いに行こうかと思ったが、こんな時まで仕事らしい。仕事の邪魔なんてしたくなくてぶくぶくとアップルジュースを泡立てる。
「皆、今何してんだろ…」
スマホを取り出し、年末に一人だわと呟く。こんなことで癒される訳では無いが、吐き出さないとやっていられない。先程まではリスナーと共に過ごし、気が紛れたがそれも持続はしない。なんか動画でも見るかな…と動いた時、スマホから音が鳴った。
『一人なのかい？ 私の部屋でピザを食べよう』
それは同期であるヴォックスアクマからのリプライだった。